技術情報

電気接点関連Cu-W合金とクロム銅の摩擦圧接

1.はじめに

摩擦圧接は接合しようとする2つの母材を突き合わせて接触させて、加圧しながら接触面に起こす相対運動により摩擦熱を発生させ、そのエネルギーにより接合する方法です。摩擦圧接には超音波振動摩擦圧接、回転摩擦圧接などがありますが、弊社では回転摩擦圧接を採用しています。回転摩擦圧接機には連続駆動式摩擦圧接機(制動式あるいはブレーキ式)、蓄勢式摩擦圧接機(フライホイールあるいはイナーシャ式)があります。前者は摩擦圧力、回転数、時間、よりしろで制御する方式で、後者は初期の回転数、摩擦圧力によって所定の摩擦力が働いたときに接合が完了する方式です。弊社の回転摩擦圧接機は前者の連続駆動式摩擦圧接機であり、主にCu−w合金とクロム銅の摩擦圧接に使用しています。このようにした接合製品は遮断器、断路器などの接触子として用いられています。 接触子の代表例を(写真1)に示します。
回転摩擦圧接機の特徴は以下に示す通りです。
(長所)
(1) 接合部に鋳造組織を生ずることなく、しかも短時間で接合できます。
(2) 被溶接部の軟化(硬度低下)がほとんどありません。
(3) 気密接合ができます。
(4) 自動化に適しています。
(5) 同種金属のみならず、異種金属の接合も可能です。
(6) 接合における消費エネルギーが少なくて済みます。
(7) 接合における前処理、後処理の必要がありません。
(8) ろう材やフラックスが不要です。
(9) 残留フラックスによる腐食の心配がありません。
(短所)
(1) 少なくとも一方の素材は円形断面を有する必要があり、薄物の接合は困難です。
(2) 摩擦過程初期および回転停止時に発生する大きなトルクに耐えられるだけの把握部分と素材強度が必要です。

3.摩擦圧接接合原理

図1に摩擦圧接の過程を示します。
(a)母材の一つ(ここではC40A2またはNDB−C40A2)を所定の回転数で回転させる。
(b)これに他の母材(ここではクロム銅)を適当な推力(摩擦圧力)で加圧して母材接触面で摩擦発熱させる。
(c)接触面及びその近傍の場材の温度が上がって変形抵抗が下がり、その部分の推力によって押し出されバリとなる。
(d)接合面が接合に十分なだけの塑性変形状態に達すると、それまで維持していた母材の回転を急停止させ接合を完了させる。急停止時には推力を一段と増大させアプセット圧力を加え、接合が完了する。
以下、実際に従来ろう付けとの比較を行いながら摩擦圧接の特徴を紹介します。

4.接合条件

4-1.試験片
A;Cu-w合金C40A2とクロム銅の摩擦圧接品(以後、ダイレクト圧接品と呼称)
B;NDB−C40A2とクロム銅の摩擦圧接品(以後、NDB圧接品と呼称)*
C;C40A2とクロム銅のAgろう付け品(以後、ろう付け品と呼称)
* 「NDB」とは Non Defective Bonding の略称で弊社で開発したろう材を使用しない直接接合方法です。

4-2.圧接方法
適正条件でダイレクト圧接品の場合はチップとなるC40A2を回転させ、台金となるクロム銅を固定側にして圧接します。NDB圧接品の場合は銅層とクロム銅が圧接するようにセットします。なお、比較材のろう付け品は銀ろう(BAg−3)を用い、トーチろう付けしています。

5.接合特性

5-1.機械的特性
5-1-1.剪断強度(下図参照)
ろう付け品と比べてダイレクト圧接品は約1.5倍の剪断強度を有し、ばらつきも1/2以下と安定した値となっています。 NDB圧接品はダイレクト圧接品より高い剪断強度を有していますが、ばらつきがやや大きくなっています。これはNDB層である銅の厚さばらつきの影響によるものと考えられます。
5-1-2.引張り強度(下図参照)

引張り強度は剪断強度と同様な傾向を示しています。ただし、ここではダイレクト圧接品が最も高く、ろう付け品の約1.7倍の強度を示しています。

5-1-3.曲げ強度(下図参照)

5-1-3.曲げ強度(下図参照)

曲げ強度も引張り強度と同様な傾向であり、ダイレクト圧接品はろう付け品の約1.8倍の強度を有しています。

5-1-4.シャルピー衝撃値(下図参照)

5-1-4.シャルピー衝撃値(下図参照)

JISZ2202 3号試験片(Uノッチ)により、シャルピー衝撃値を測定しています。傾向は剪断強度と同様で、ダイレクト圧接品、NDB圧接品とも母材(クロム銅)に匹敵する衝撃値(吸収エネルギー値)を示していますが、ろう付けは品衝撃における吸収エネルギーがほとんどない状態で脆く、非常に低い値を示しています。

5-2.熱的特性(熱衝撃)

下図のように加熱して、600℃から水冷を10回繰り返しましたが、三者とも外観上の変化は見られませんでした。そこでこれらを剪断試験し、熱衝撃における劣化具合を調べましたが、図2と比較しても強度の低下は認められませんでした。 しかし、写真2の接合境界を見ると、ろう付け品の場合、ろう層とC40A2の境界に小さなクラックが入っているのがわかります。一方、ダイレクト圧接品,NDB圧接品には接合境界にクラックなどの異常は認められませんでした。 以上のことより、熱衝撃における耐久性はダイレクト圧接品、NDB圧接品がろう付け品よりも優れていると言えます。

6.おわりに

以上のように摩擦圧接による接合はろう付けと比べ、接合安定性、機械的特性、熱的特性などの接合性全般で非常に優れていることがわかります。また、ここでは述べていませんが、摩擦圧接の際、Cu−w合金あるいはクロム銅またはその両方が酸化または油などの付着があっても、圧接の過程でそれらが押し出されて接合には何ら影響はありません。さらに、接合面の面粗さもまったく影響しません。ろう付けは面粗さ、前処理が接合において重要な要素となりますが、摩擦圧接ではそれらの管理が不要であり、このことからも摩擦圧接の接合安定性が証明されます。なお、摩擦圧接を利用した接触子のサンプル、試作などご一報頂ければ幸いに存じます。
  参考文献;荒田吉明編著 朝倉金属工学シリーズ「溶接工学」朝倉書店(1980)

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