日本タングステン・基山工場を訪ねて
金属の中で高い耐熱性をもつタングステン。これに通電性に優れた銅や銀を混ぜた合金で生まれる様々な電気・電子材料製品。今回はこれらを製造する基山工場の電材部品部より当社創生期からの製品である銅タングステンについてご紹介します。
電材部品部では、ブレーカーの接点材料を製造しており、お客様の目的に応じて銅などの通電部材に接合し提供しております。
銅タングステンは当社設立後、間もない1934年ごろより開発を始め商品化した歴史のある製品です。また、タングステンの摩耗しにくい性質と銅の優れた熱伝導性をあわせもつ商品として当時は理想的な接点材料と評され、当社の主力商品として活躍してきました。以下、銅タングステンができるまでの流れをご紹介します。
混合粉末を型に入れ、高圧で押し固める
製造工程はまず、タングステンなどの粉末を所定の割合で配合し、混合機で混合されて原料となる粉末が作られます。通電性が良い銅と耐熱性を持つタングステンの特性を生かすために、製品の用途に応じて混ぜる割合を変えています。その際の比率は3:7から4:6です。混合された粉末は約1トン/cm2の高圧力で押し固めチョークほどの硬さになります。この段階で、この後でご紹介する焼結を行う前に粗加工します。
焼結でできた気孔を銅で満たし合金に
プレスされた成型物は水素または不活性ガス雰囲気内で焼結します。ここでは前回ご紹介した通電法ではなく、1,200〜1,400℃の高温で焼結します。できあがった複合合金は旋盤による切削、砥石による研削などの最終加工が施され、製品となります。「銅とタングステンはそのまま混ぜて焼結しても、うまく焼き固めることが難しいため、一度すき間の多いタングステンの固まりを作り、これを溶解した銅で満たし、緻密な合金にする溶浸という技術を用います。」(原リーダー)溶浸は、スポンジに水をしみ込ませて気密にするようなもので、合金が電気接点などの製品として発揮できるように緻密化する粉末冶金独特の技術です。
異素材を接合する独自技術
接点材料や抵抗溶接電極は、タングステンの複合合金に銅などが接合された製品です。この接合技術として当社が開発したNDB法(無欠陥接合)は、銅タングステンの接点と銅の台金、タングステンなどの電極と銅製の台金を、融点が低い銅の特性を利用して直に接合する技術です。
また、回転による摩擦熱を利用した圧接方法もあり、どちらもロウ付け(母材を溶解することなく融点の低いロウ材を接合部に流入させる接合方法)するより強度が高く、接合部の電気抵抗は低く、熱伝導性は高いのが特徴です。これらは高い接合信頼性を有しており、使用条件の厳しいガス開閉器や柱上開閉器などの銅タングステン接点と銅系台金の接合に使われています。
電流を確実にON/OFFすることは、電気スイッチの重要な役割。基山工場電材部品部では高い技術力の下、信頼性の高い電気・電子材料製品が生み出されています。