日本タングステン・基山工場を訪ねて
日本タングステンの超硬合金材料の中には、通常の超硬合金と異なり、ニッケルやコバルトの金属結合相などを含まず、炭化タングステン相を含む硬質相のみからなる『バインダレス超硬合金』もあります。今回は、この『バインダレス超硬合金』素材を用いた、『超精密モールド用超硬合金』をご紹介します。
現代社会で活躍するさまざまな光学機器に欠かせないのがレンズ。カメラ、センサ、携帯電話、DVD・CD機器、さらにはLED照明などにもレンズが必要です。以前はガラスを削り出して作っていたレンズですが、より安く大量に供給するため、現在では金型(モールド)によるレンズ成形が主流となっています。レンズ成形は、レンズ材を高温下で圧縮することで行われるため、成形金型には高温下・加圧下での高い耐久性が求められます。こうした要求に応えるのが当社の超精密モールド用超硬合金です。
熱に強く高精度な「バインダレス超硬合金」
レンズ成形用金型に用いられる多彩な材質の中でも、より優れた特性を持つのが『バインダレス超硬合金』です。「バインダレス」とは、通常の超硬合金と異なり、炭化タングステンに添加するコバルトやニッケルなどの金属成分を含まない素材を指します。従来の超硬合金の金属相を、複炭化物相に置き換えることで、非常に硬く、耐久性のある素材が得られます。当社では世界に先駆けてバインダレス超硬合金を開発し、優れた特徴を活かした製品を製造しています。バインダレス超硬合金は金属成分を含まないため、高温でも酸化されにくく、長期間の使用に耐える強度を保てます。
当社の超精密モールド用超硬合金は、バインダレス超硬合金の中でも、より酸化に強く、傷つきにくく、より鏡面加工が可能な素材を用いて製造します。
素材を活かす高い製品加工技術
当社の強みのひとつが、素材から製品製造まで一貫した生産ができることです。社内で粉末から調製する超硬合金を用い、用途に合わせた特性を持つ素材を生み出します。素材を知り尽くしている製造現場ではミクロンの精度で加工を行っています。
バインダレス超硬合金は緻密で高強度なため、加工が非常に難しい素材です。焼結後の研削作業をできるだけ少なくするために、焼結工程での収縮率を正確に計算し、最終製品に近い形で焼結体を製造しています。材料開発と加工技術、当社の2つの高度な技術が融合した代表例が『超精密モールド用超硬合金』なのです。
高度化する市場の要求に対応
デジカメにミラーレスカメラが登場したように、近年の光学機器はレンズを減らす傾向にあります。使用するレンズが減るということは、1枚のレンズの性能が上がることを意味します。
高性能レンズを作るためには、より高精度での成形に対応可能な金型が必要とされ、それを可能にする超硬合金の開発が求められます。当社ではお客様のニーズに合わせ、新しい材料の開発、加工技術の工夫を日々行っています。
また、お客様のグローバルな生産体制に対応した、リードタイムの短縮や技術サポートの提供などにも積極的に取り組んでいます。