技術情報

第35号 高密度タングステン合金『ヘビーアロイ』No Cd接点(カドミフリー接点)

1.はじめに

 配線用遮断器(MCCB)および、電磁接触器(MS)などの中負荷電流域での電気接点材料として、銀−酸化物系接点材料が多く用いられています。この材料は、耐食性・電気伝導性・熱伝導性・加工性等に優れた銀(Ag)をベースに、電気接点に必要な特性である耐溶着性や、耐アーク消耗性などを付加するため、各種酸化物を添加・分散させたものです。その酸化物としては、従来から主酸化物として、その優れた特性により酸化カドミウム(CdO)が、多く用いられてきました。しかしながら、カドミウム(Cd)は近年、人体に悪影響を及ぼす物質として、問題視されています。さらに、昨今の環境保護問題はもとより、ISO14000取得化の流れの中で、Cdを含まない銀−酸化物系接点材料の検討・開発が、重要不可欠となってきました。  弊社では、永年、銀−酸化物系接点の開発、製造に取り組んできました。その蓄積したデータ及び、製造技術を生かして、Cdを含まない銀−酸化物系 カドミフリー接点"CL-8"を開発致しました。  以下、銀−酸化物系 カドミフリー接点"CL-8"の、合金特性並びに、従来のAg-CdO系接点と比較した電気的特性について、御紹介致します。

2.エメ CL-8の製造方法

弊社においては、エメ CL-8は、前酸化法(リベットタイプ)、後酸化法(内部酸化法)(リベットタイプ、チップタイプ(ろう付け含む))共に、製造が可能です。図.1に、後酸化法(内部酸化法)の製造工程について示します。(また、今回の合金特性、電気的特性は、後酸化法(内部酸化法)にて製作したサンプルのデータです。)

3.エメ CL-8の合金特性

3-1)CL-8の物性値(内部酸化法による)
表.1にCL-8の物性値を、弊社のCdO入り接点及び、他社製カドミフリー接点と比較して示します。
― 表.1 CL-8の物性値 ―
材質名組成硬度HR-15T電導度IACS%
CL-8Ag-SnO28050
TC-7Ag-CdO-α8055
DM-2XAg-CdO-α7555
DM-1Ag-CdO-α7855
A社製Ag-CdO-α8045
(**TC-7,DM-2X,DM-1は、弊社のCdO入り接点)
(***A社製は、他社のカドミフリー接点を示す)
3-2)CL-8の断面組織(内部酸化法による)
写真.1にCL-8の断面組織を、弊社のCdO入り接点及び、他社製カドミフリー接点と比較して示します。

4.CL-8の電気的特性(性能評価試験)

4-1)アーク遮断消耗特性
電磁反発を利用して、アーク遮断消耗試験を行った結果を、図.2に示します。    
CL-8は、アーク遮断による消耗が非常に少なく、優れたアーク遮断消耗特性を示します。
[試験条件]
電圧 :AC 230V    
電流 :3000A   1極    
接点サイズ:可動子・固定子 共に Φ6×1(F)    
電磁反発を利用して、5回遮断後の体積消耗量を測定する  
4-2)溶着特性(溶着試験)
図.3にCL-8の溶着試験の結果を示します。試験機は、市販のブレーカー(定格50A:2極)を改造したものであり、下記条件にて試験を行い、溶着発生率及び、溶着力を示しています。CL-8は、Ag-CdO系接点の中で最も耐溶着性に優れるDM-1,DM-2Xよりは若干劣りますが、TC-7及び他社製接点より、耐溶着性が優れています。
[試験条件]
電圧:AC120V       
電流:3000A(半波遮断) 2極          
接点サイズ:Φ6×1(F) 40回遮断:"O"責務、"CO"責務 各20回
4-3)定常電流開閉における消耗特性/接触抵抗特性
(インチング試験)
図.4に、CL-8接点のインチング試験による開閉消耗特性と、接触抵抗特性を示します。試験機は、クラッパー型の開閉試験機(3極)を用い、下記条件にて行ないました。
[試験条件]
電圧:AC 230V
電流:200A  3極
力率:0.76      
開閉頻度:1200回/時間
接点サイズ:可動子・固定子 1.5*8*8(F)
測定:開閉20回毎に接触抵抗を測定し、10,000回開閉後の体積消耗量を測定した。

CL-8接点は、開閉消耗量が最も少なく、接触抵抗特性においても良好な結果が得られました。

5.まとめ

以上、CL-8接点の合金特性並びに、基礎的な電気試験による電気的特性について、簡単に述べましたが、エメCL-8接点は、従来のAg-CdO系接点に比べ、遜色ない耐消耗特性・低接触抵抗特性・耐溶着特性を有しています。今後、環境保護問題に対する関心度の向上、各企業での環境問題取組みの加速度的な進展の中、御社のMCCBおよびMS用接点に、是非採用して頂きますよう、御検討をお願い申しあげます。

(研究開発センター 商品技術Gr :大場友樹  上野智行)

ニッタン技報 

日本タングステンへのお問い合わせはこちら

お電話・FAXのお客様はお近くの営業事務所へお問い合わせください。
  • 東京事務所 TEL 03-5244-9266 FAX 03-5244-9267
  • 刈谷事務所 TEL 0566-45-5333 FAX 0566-45-5334
  • 大阪事務所 TEL 06-6152-8577 FAX 06-6152-8614
  • 基山事務所 TEL 0942-81-7760 FAX 0942-81-7712
  • TEL 0942-50-0050 FAX 0942-81-7713
日本タングステン株式会社(Nippon Tungsten Co.,Ltd)
〒812-8538 福岡市博多区美野島一丁目2番8号
TEL 092-415-5500(代表) / FAX 092-415-5511(代表)
Copyright(C) 2006 Nippon Tungsten Co., Ltd. All right reserved.
お問い合わせフォーム お電話・FAXでのお問い合わせ