技術情報

第35号 高密度タングステン合金『ヘビーアロイ』Si3N4粉砕ツール

1.はじめに

 セラミックス材料はその特徴として高硬度、高耐食性、耐摩耗性、耐熱性などを有しております。これらの特徴の中でも、耐摩耗性は特に優れるところであり、現在まで使用されていた鉄系もしくは合金系材料の多くの部材が耐摩耗性の高いセラミックスに置き換えられてきました。その耐摩耗性の特徴を生かした部材として現在注目を集めているのが「硬質材料の粉砕機器」及び「搬送用部品」です。粉砕機器とは主に岩石、砂、コンクリート、粉体等を粉砕する工程などに用いられる部材です。高い速度で硬質材料を粉砕する工程で用いられるため高い耐摩耗性が求められます。また同様に、硬質材料を搬送する際に通路となる部材の「搬送用部品」も耐摩耗性を要求される部材です。 今回、日本タングステンセラミックス材料は工具に用いられる緻密で高強度・高靭性な材料でありますが、中でも特に硬質材料に対する耐摩耗性に優れ、製造上大型製品にも対応のできる弊社窒化珪素系材料"NPN-3"を中心に耐摩耗性のデータ、実績をご紹介いたします。

2.日本タングステン窒化珪素材料"NPN-3" 紹介

日本タングステンのセラミックス材料は歴史が古く、その多くは切削工具に使用する材種を、構造材へ発展させたものであり、耐摩耗性、耐熱性等に優れる材料であります。 また、窒化珪素材料は数あるセラミックス材料の中でも強度、破壊靭性、耐摩耗性に優れる材料ですが、日本タングステンの窒化珪素材料"NPN-3"は優れた特性を持つ窒化珪素を緻密に焼成し、HIP処理を加えることにより、さらに機械的性質を向上させた材料となっております。  NPN-3の各物性値の比較を図1に、また緻密で、ポアレスなNPN-3の研磨面の組織写真を写真1に示します。NPN-3は密度が小さく、強度、靭性、硬さが高いというバランスのとれたセラミックス材料であります。組織写真に見られるように、ほぼ理論密度に達しているため欠陥となる気孔がなく、優れた摩耗特性を示すことを示しております。さらに、窒化珪素と鉄材、超硬合金を比較した際に大きなメリットとなるのがその密度であります。 後で記載しているように窒化珪素は耐ブラスト性に優れる材料であり、セラミックスの中で最も軽量な部類にあり、超硬合金と比較して約1/5、鉄材と比較しても1/2以下の密度ですので、比強度(強度/密度)が高いという特徴があります。またヤング率が高いので、軽量化とあいまって高速回転体などのモーメントのかかる部材として使用する場合は機械自体の強度、剛性の設計値を他材料に比べて小さくとる事ができ、コストダウンが可能となります。また、従来の機械に取り付けた場合も、回転軸への負担が軽減される事によりメンテナンスの手間、部品交換の頻度、使用電力の削減などさまざまなメリットがあります。

3.耐摩耗性

 耐摩耗性は、硬度や強度と異なり摩耗の相手材に大きく左右されます。一般に相手材が硬いほど部材は大きく摩耗しますが、硬さに限らず化学的性質、粒度、衝突および摺動速度、温度などによりその特性は大きく変化します。そこで、実際の使用時の摩耗に近づけるために、相手材を硬質な砂の成分に近い炭化珪素パウダーを用いたブラスト加工機による耐摩耗テストを行いました。テストの模式図、及び、条件を表1と図2に示します。  他材種のセラミックス、及び、汎用の窒化珪素を用いた比較試験の結果を図3に示します。NPN-3は軽量かつ、耐摩耗性に非常に優れることが分かります。また、一般に、ブラスト試験では被試験材に対して垂直方向に処理を行うと硬い材料ほど摩耗が大きくなる傾向にあります。試験の結果よりNPN-3は硬度が非常に高いにもかかわらず、粒子との衝撃、摩擦に対しても優れた耐摩耗性を有すことが分かります。

4.使用例紹介

 この窒化珪素セラミックスの耐ブラスト特性を生かした新しい用途に粉砕用の耐摩耗部品があります。この部品は、従来は鉄系部品から始まり、超硬合金やアルミナ系、ジルコニア系などのセラミックスが使用されるなどの改善が検討されてきましたが、摩耗による短寿命や回転部材の慣性重量の大きさが問題となっておりました。耐ブラスト特性に優れる汎用Si3N4系セラミックスからさらに特性の良いNPN-3によってさらに長寿命化が可能となりました。その比較を図4に示しますが、寿命で約2倍の性能を可能としました。弊社では、切削工具と同等の優れた耐摩耗特性をもつSi3N4セラミックスの大型製品を実用化しており、小物部品から大型部品までの幅広い用途、形状に対応した粉砕部品の製品化を行なっております。写真2に大型部品の一例を示します。このように緻密で強度の高いSi3N4系セラミックスの大型部品を使用する事によって、耐摩耗寿命に優れた応用が可能となります。  また、耐ブラスト特性を生かした用途に粉体ノズルがあります。高い速度をもつ粉体は、高いエネルギーを持つためその通路や出口であるノズルに多大な損傷をもたらします。よって、通常はアルミナなどの硬質セラミックス材料が使用されますが、出口ノズルは粉体の放出方向が変化するために、特に摩耗が発生する場所になっております。よって、最も硬いセラミックスであるボロンカーバイドが使用される場合がありますが、ボロンカーバイドとほぼ同等の摩耗を示します。

5.最後に

以上の結果より、弊社の窒化珪素材料NPN-3は、窒化珪素材料の中でも非常に耐摩耗性に優れていることをご紹介しましたが、耐摩耗性に限らず比強度、硬度、靭性等も優れた材料となっております。 耐摩耗部材等でセラミック化をご検討される場合には、特殊形状や大型品などのご希望に応じた対応が可能ですので、ご一報頂けますよう、お願い申し上げます。

ニッタン技報 

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