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ニッタン技報銀−酸化物系 カドミフリー接点"CL-8"

1.はじめに

配線用遮断器(MCCB)および、電磁接触器(MS)などの中負荷電流域での電気接点材料として、銀−酸化物系接点材料が多く用いられています。この材料は、耐食性・電気伝導性・熱伝導性・加工性等に優れた銀(Ag)をベースに、電気接点に必要な特性である耐溶着性や、耐アーク消耗性などを付加するため、各種酸化物を添加・分散させたものです。その酸化物としては、従来から主酸化物として、その優れた特性により酸化カドミウム(CdO)が、多く用いられてきました。しかしながら、カドミウム(Cd)は近年、人体に悪影響を及ぼす物質として、問題視されています。さらに、昨今の環境保護問題はもとより、ISO14000取得化の流れの中で、Cdを含まない銀−酸化物系接点材料の検討・開発が、重要不可欠となってきました。  当社では、永年、銀−酸化物系接点の開発、製造に取り組んできました。その蓄積したデータ及び、製造技術を生かして、Cdを含まない銀−酸化物系 カドミフリー接点"CL-8"を開発致しました。  以下、銀−酸化物系 カドミフリー接点"CL-8"の、合金特性並びに、従来のAg-CdO系接点と比較した電気的特性について、御紹介致します。

2. エメ CL-8の製造方法

当社においては、エメ CL-8は、前酸化法(リベットタイプ)、後酸化法(内部酸化法)(リベットタイプ、チップタイプ(ろう付け含む))共に、製造が可能です。図.1に、後酸化法(内部酸化法)の製造工程について示します。(また、今回の合金特性、電気的特性は、後酸化法(内部酸化法)にて製作したサンプルのデータです。)
図1 エメ CL-8の製造工程(内部酸化法)
図1 エメ CL-8の製造工程(内部酸化法)

3. エメ CL-8の合金特性

(3-1)
CL-8の物性値(内部酸化法による) 表.1にCL-8の物性値を、当社のCdO入り接点及び、他社製カドミフリー接点と比較して示します。
表1.Ti-Alターゲットの組成及び不純物
材質名 組 成 硬度HR-15T 電導度IACS%
CL-8 Ag-SnO2-α 80 50
TC-7 Ag-CdO-α 80 55
DM-2X Ag-CdO-α 75 55
DM-1 Ag-CdO-α 78 55
A社製 Ag-SnO2-α 80 45
(**TC-7,DM-2X,DM-1は、当社のCdO入り接点)
(***A社製は、他社のカドミフリー接点を示す)
(3-2)
Cl-8の断面組織(内部酸化法による) 写真.1にCL-8の断面組織を、当社のCdO入り接点及び、他社製カドミフリー接点と比較して示します。
写真1 CL-8 の断面組織
写真1 CL-8 の断面組織

4. CL-8の電気的特性(性能評価試験)

(4-1)アーク遮断消耗特性

磁反発を利用して、アーク遮断消耗試験を行った結果を、図.2に示します。
CL-8は、アーク遮断による消耗が非常に少なく、優れたアーク遮断消耗特性を示します。

[試験条件]
電圧 :AC 230V
電流 :3000A   1極
接点サイズ:可動子・固定子 共に Φ6×1(F)
電磁反発を利用して、5回遮断後の体積消耗量を測定する
図2 CL-8のアーク遮断消耗特性
図2 CL-8のアーク遮断消耗特性
(4-2)溶着特性(溶着試験)

図.3にCL-8の溶着試験の結果を示します。試験機は、市販のブレーカー(定格50A:2極)を改造したものであり、下記条件にて試験を行い、溶着発生率及び、溶着力を示しています。CL-8は、Ag-CdO系接点の中で最も耐溶着性に優れるDM-1,DM-2Xよりは若干劣りますが、TC-7及び他社製接点より、耐溶着性が優れています。

[試験条件]
電圧:AC120V
電流:3000A(半波遮断) 2極
接点サイズ:Φ6×1(F) 40回遮断:"0"責務、"CO"責務 各20回
図3 CL-8の溶着特性
図3 CL-8の溶着特性
(4-3)定常電流開閉における消耗特性/接触抵抗特性(インチング試験)

図.4に、Cl-8接点のインチング試験による開閉消耗特性と、接触抵抗特性を示します。試験機は、クラッパー型の開閉試験機(3極)を用い、下記条件にて行ないました。

[試験条件]
電圧:AC 230V
電流:200A  3極
力率:0.76
開閉頻度:1200回/時間
接点サイズ:可動子・固定子 1.5*8*8(F)
測定:開閉20回毎に接触抵抗を測定し、10,000回開閉後の体積消耗量を測定した。
CL-8接点は、開閉消耗量が最も少なく、接触抵抗特性においても良好な結果が得られました。
図4 CL-8接点の開閉消耗特性/接触抵抗特性 (インチング試験)
図4 CL-8接点の開閉消耗特性/接触抵抗特性 (インチング試験)

5. まとめ

以上、CL-8接点の合金特性並びに、基礎的な電気試験による電気的特性について、簡単に述べましたが、エメCL-8接点は、従来のAg-CdO系接点に比べ、遜色ない耐消耗特性・低接触抵抗特性・耐溶着特性を有しています。今後、環境保護問題に対する関心度の向上、各企業での環境問題取組みの加速度的な進展の中、御社のMCCBおよびMS用接点に、是非採用して頂きますよう、御検討をお願い申しあげます。
(研究開発センター 商品技術Gr :大場友樹  上野智行)

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