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超硬合金NTダイカッターの特徴と応用の可能性

1. 製品概要

 NTダイカッターは抜き金型などでは加工が困難な紙・不織布などの輪郭を高速・高精度で切断する超硬合金製ロータリーカッターです。
ロータリーカッターは外周表面に3次元形状をもつダイカッターと平滑な外周表面を持つアンビルロールから構成され、その間にワークを貫通させることによって所用の輪郭加工を行うものです。従来のものは、ダイス鋼などの鉄系材料が使用されていましたが、切れ味が悪く、摩耗によってカッター寿命が短いという欠点を持っていました。
 これらの問題を解決するため、1986年、ダイカッターとアンビルロールに当社独自の超硬合金と加工技術を適用することによって、世界に先駆けて、超硬合金製ロータリーカッター「NTダイカッター」の商品化に成功しました。これにより、ロータリーカッターの寿命は従来品と比較して約10倍まで飛躍的に改善され、さらに高速加工や良好な切断特性、高信頼性までも得ることができました(特許取得済み)
 NTダイカッターは商品化後も、お客様のニーズに応えながら改良を重ね、国内外の多くのお客様から高い評価を得ております。これからもNTダイカッターはISO9001(-2000)認証工場より超硬合金製ロータリーカッターの世界ブランドとしてお客様に最高の性能を提供いたします。

2. 特 徴

(1)超高速加工
 NTダイカッターは当社独自の超硬合金と加工技術から生まれたロータリー式カッターで、金型抜き加工などと比較して約10倍の超高速で加工することが可能です(製品加工速度に換算して300m/min以上)。これは、1.超硬合金が鉄の約3倍のヤング率(約540GPa)を有しており、高い刃先先端応力を発生できること、2.従来の金型抜き加工が製品流れに対して非連続な加工(ワークセット・加工/排出・ワーク移動)であるのに対して、NTダイカッターが連続加工であること、などによります(Fig.1参照)。
(2)長寿命・高信頼性
 NTダイカッターには高硬度でかつ高強度を持つ当社独自の超微粒子超硬合金が適用され、従来のダイス鋼と比較して約10倍の長寿命化を達成しています。また、独自の刃先研削加工技術と焼結技術を適用し、チッピングや異常摩耗の原因となる欠陥や形状誤差を極限まで抑制することにより、高い信頼性とシャープな切れ味を得ることができました。
 
(3)広い適用範囲とフレームユニット
 NTダイカッターは広い範囲のワーク切断加工に用いることが可能であります。紙・不織布はもとより、ポリエチレンなどの合成樹脂フィルムや銅・アルミなどの金属箔、さらにそれらの複合フィルムに対しても良好な切断特性を示します。また、お客様の製造ライン設備に合わせて最適なフレームユニットの設計・製作も可能です。

(4)No.1ブランドの実績と経験
 1986年に商品化して以来、広い分野の多くのお客様にダイカッターを提供し、No.1ブランドとして高い評価を頂いて参りました。その中で培われたノウハウと経験は、新たなお客様のニーズやトラブルに対しても活かされ、それぞれにベストな提案でお答えいたします。

3. 関連技術

(1)超微粒子超硬合金
 ロータリーダイカッターとして要求される材料特性としては1.長寿命であること(耐摩耗性)、2.信頼性が高いこと(耐チッピング性)、3.切れ味がよいこと、などが挙げられます。これらを満足するには高硬度でかつ高強度の超硬合金が必要となります。そのため、NTダイカッターには当社独自の超微粒子超硬合金が採用されております。
超微粒子超硬合金は硬質物質であるWC(タングステンカーバイド)の粒径を非常に小さく(1μm以下)することによって、従来の超硬合金と比較して高い硬度と強度を達成いたしました(Fig.2参照)。さらに、粒径を小さくすることによって刃先先端がよりシャープになり、切れ味をも改善しております(Fig.3参照)。(特許出願中)
(2)粉末冶金技術
 NTダイカッターは粉末を焼き固めて製品にする粉末冶金技術によって製造されています。製造工程は大きく分けて、粉末混合から焼結・HIPまでの焼結工程とその後の機械加工工程に分けられます。
 焼結工程では高い材料物性と安定な品質を得るために、当社独自の焼結技術が活かされております。特にHIP(Hot Isostatic Pressing、Fig.4参照)は焼結後に高温高圧処理する特別な処理で、チッピングや破壊の原因となる微小残留ポア(空孔)や微小クラックなどの材料欠陥を極限まで抑制し、材料が本来持っている最
高の性能を引き出すことができます。

(3)機械加工技術
 NTダイカッターの性能には機械加工精度が大きく影響します。種々の高精度研削加工装置と検査装置を駆使して、ミクロンオーダーの加工精度を保証しています。(特許出願中)

(4)材料&機械設計技術
 お客様のニーズに最適な材料設計と機械設計を行っております。材料設計としては、駆動方式やワークなどによって最適な超硬合金材料を設定しております。また、機械設計としては、FEM解析結果をもとに刃先パターン形状や刃先寸法などについて最適値を設定しております。(特許出願中)
 また、高価な超硬合金を効率的に使用するため、スリーブタイプ・セパレートタイプ・セグメントタイプと3つの方式を採用しており、お客様のニーズに合わせてコストパフォーマンスを高める検討も行っています(Fig.5参照)。

4. 用途及び評価

1986年の誕生から17年経った現在、NTダイカッターは、国内はもとより海外でも様々な用途に使用されています。以下に、各用途毎の動向を説明いたします。

(1)衛生用品(女性用生理用品)
衛生用品業界では生産スピードの向上が図られ続けてきました。現在では、コンバーターメーカの努力によって、300m/minを超えるライン送りスピードでの生産も行われております。この様な高速加工を実現するためには、剛性の高いフレームユニットと加圧システム、及び切れ味の良い刃物が要求されています。加えて、24時間連続運転では、ツールチェンジの工数を少なくする必要があるため、刃物自体に長寿命と高い信頼性が要求されています。NTダイカッターは超硬合金の特性を活かし、このようなお客様の要望を実現してきました。
NTダイカッターは、高速加工の実現のみならず、ランニングコストの低減、メンテナンス工数の低減をも実現し、同業界のお客様より非常に高い評価を得ております。

(2)おむつ
おむつ市場では、近年大人用おむつの需要が伸びており、それに対応した大型ダイカッターが求められています。当社においても、大型プレス装置・大型焼結炉・及び大型HIP装置を駆使して、最大で直径360mm、有効長さ500mm、全長1800mmの超硬合金製ダイカッターの製作実績があります(H14年度超硬工具協会賞受賞)。加えて、長年培ってきた研削加工技術により、このような大型ダイカッターでも刃先精度をミクロンオーダーでコントロールすることを可能としております。

(3)広範な適用材料(被加工材)
梱包材には紙・不織布・有機フィルム・複合フィルムなど多岐に渡る材料が使われており、その切断形状も様々です。さらに、完全切断・ミシン目切断・ハーフカットなど、切断方法もバリエーションに富んでいます。これらの要求に応えるため、お客様との綿密な仕様打ち合わせを経て最適設計を行い、実際の性能などをさらに設計へフィードバックすることで、よりよいダイカッターを提供してきました。

(4)金属箔
近年、製品に小型・薄型が要求されることから、10μm以下の厚さを持つ金属箔が工業界で使用されています。これらを抜き金型で切断するためには、パンチとダイのクリアランスに高い精度が要求されます。一般的には、クリアランスは打ち抜き材厚の3〜12%1)にすることが推奨されていますが、10μmの材料の場合、クリアランスは1μm前後が必要となります。しかし、その様なクリアランスを有する打ち抜き金型は、工業的に極めて製造が困難であり、前述の薄厚金属箔は工業的に切断が困難な材料とされてきました。一方ロータリーカット方式は、このクリアランスの問題がなく、高速でかつシャープな切れ味を得ることが可能です。
加えて、ロータリーカット方式を用いた場合、製品流れ方向間のトリムを無くすゼロトリム方式が容易に実現可能であるため、材料歩留まりを良くする効果もあります。よって、高価な原材料をご使用のお客様にとっては、非常に興味深い切断方法であると言えます。また、硬い金属材料を切断するため、従来のダイス鋼製ダイカッターと比較して優れた耐摩耗性(寿命)を持つ超硬合金製ダイカッターが強く求められるようになっています。

(5)その他
既にダイス鋼製ダイカッターをお使いのお客様に対しては、超硬合金製ダイカッターの持つ長寿命化・メンテナンスの省力化・難加工材への適用と言ったパフォーマンスが魅力となり、超硬合金製ダイカッターへの移行に関する多くの引き合いを頂いております。
また、ロータリーカッターをお使いでないお客様や、これから新たに切断方法を検討されるお客様からも、ロータリーカッターの持つパフォーマンス(切断面の品質・複雑輪郭形状の切断など)に対して大きな期待を寄せられ、当社ホームページ(https://www.nittan.co.jp/)を経由して、たくさんのご質問・ご要望を頂いております。
当社としては、これらお客様のニーズに応えるため営業・技術サービスを積極的に取り組んでおります。また、独自の材料・加工技術をさらに進化すべく研究開発を行い、新技術・新材料を迅速に市場へ投入できるよう注力しています。

5. 最近の取り組み

(1)超々微粒子超硬合金
 超硬合金中の硬質粒子であるWC(タングステンカーバイド)の粒径を小さくすることによって、強度・硬度を高めることについては既に説明したとおりですが、材料技術・焼結技術を進化させ、さらにWC粒子を微細化した新材料:超々微粒子超硬合金を開発することに成功いたしました2)。このことによって、硬度・強度ともさらに高いレベルで実現することが可能となりました。現在では、この新材料を既存の超微粒超硬合金よりもさらに高性能を要求される用途に適用し、性能を大きく向上することができました。今後、NTダイカッターの性能向上において大いに期待される材料です。(特許出願中)

(2)切断品質の向上
 金属や一部の樹脂など延性の高い材料では、ロータリーカッターで切断すると、切断部のバリが問題となっていました。このバリは、刃先のランド部(平坦な部分)が材料を押し潰したものです。刃先のランドを無くすことによってこのバリは消滅いたしますが、他方で切断性能が不安定になったり、刃先にチッピングが発生しやすくなるなど様々な弊害を生じ、問題となっていました。
 当社では、金属の切断メカニズムに関する基礎研究を行い、バリの発生機構に関する知見を得ました。その上で、ロータリーカッターとしての性能を低下させずに、バリの発生を制御するダイカッターの開発に成功いたしました。(特許出願済み)
 現在、この技術を適用したダイカッターを金属箔加工に適用し、お客様より高い評価を頂いております。

(3)再研磨体制
 NTダイカッターが国内だけにとどまらず、世界各国で使用されている今日、世界中のNTダイカッターに対して再研磨を迅速に行うため、ヨーロッパ(ドイツ)、アメリカ、東南アジア(タイ)、中国(上海)に再研磨拠点を設立いたしました。これにより、継続的な再研磨サービスを提供する事が可能となりました。

(4)テストカット対応
 新たにロータリーカッターの評価を希望されるお客様や、超硬合金ダイカッターの性能評価を希望されるお客様の要望に応えて、当社にて簡易切断装置を用いたテストカット対応を行っております。お客様からお預かりした原材料を実際にカットし、その切断面の品質や切断荷重から、切断特性を判断し、ご報告しております。さらにお引き合いを頂いた際には、そのテストカットの結果を設計に反映することが可能となります。

6. おわりに

 以上、超硬合金製ロータリーカッター「NTダイカッター」の特徴について述べさせていただきましたが、本製品の能力はまだまだ未知数です。開発以来サニタリー業界で成長を続け、ほぼ成熟した技術になりつつありますが、他の分野への展開についてはまだまだ草創期であります。現在もNTダイカッターに関する研究開発は積極的に行われており、加えて製造限界を拡大する加工技術開発もさかんに行われております。この機会に、超硬合金製ダイカッターもしくはロータリーカット方式にご興味を持っていただければ幸甚です。参考のため、NTダイカッターの主な製品仕様をTable.1に示します。

1) 超硬工具協会:超硬工具ハンドブック1998 p283
2) Nippon Tungsten Review, vol.34(, 2002)

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