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第39号多孔質セラミック真空チャックの紹介

1. はじめに

多孔質材料(porous materials)は、材質の特性や孔のサイズ・形
態により、人工骨などの生体分野からフィルター、触媒担体、含油軸受などの工業分野まであらゆる分野にて研究開発、実用化がなされております。
特に電子機器、液晶・半導体、燃料電池関連業界などの工業分野に
おいては、ガラス、Si基板やフィルムなどの薄型化が進んでおり、高精度化、作業性の改善を目的に多孔質材料を用いた真空チャックへの転換が行われてきております。
そのため当社としては、長年培ってきたセラミックスの製造技術
を生かした0.5μmの気孔径を有する多孔質セラミックス(NPP-125D、W)を開発し、2005年よりこの多孔質セラミックスを使用した真空チャックについても製造をしておりました(既報34号)。しかしながら、反りの強いワークの吸着には対応が難しいなど弱点も出ており、改善が望まれておりました。
今回は、上記課題の解決として開発を行った新たな多孔質セラミックス、およびフィルムの連続吸着での使用が期待されるロールタイプの真空チャックについてご紹介いたします。

2. 当社多孔質セラミックス材料および平面タイプ真空チャックの特徴について

新たな多孔質セラミックスの開発としては、@反りの強いワーク吸着の解決、A真空チャックとして吸着時の変形を最小限に抑えること、をコンセプトとして開発を行いました。

(1)気孔径の選定について
多孔質セラミックスの気孔径としては、@は気孔径を大きくした方が良く、Aは小さくした方が良いというトレードオフの関係になるため、試作した各気孔径(0.5〜22μm、気孔率30%)の真空チャック(□100)を用いて、写真2のようにφ106(41g)のセラミックス板を吸い上げる距離を評価して気孔径を選定しました(使用ポンプの排気能力72L/min.)。
(2)気孔径-吸着距離について
その結果、図1の気孔径−吸着距離の関係から判るように、気孔径0.5μmから10μmにかけて急激に吸着距離は改善され、10μm以上の気孔径での改善効果は大きくないことが確認されました。
(3)反りの矯正評価について
更に、Fig.3のように反りのあるフィルム(厚み20μm)の反り矯正を確認したところ、気孔径0.5μm(NPP-125D、W)では矯正することができませんでしたが、気孔径10μmでは問題なく矯正できることが確認されました。
(4)吸着時のフィルムの形状について
また、Fig.4の厚み20μmのフィルム吸着時のフィルム上面の形状測定結果から、吸着時のフィルムの変形についても気孔径0.5μmには及ばないものの変形は最小限に抑えられており、気孔径として10μmが有効であることが確認されました。
以上の結果から、材料として気孔径10μmを追加することといたしました。
なお、物性値についてはTable1に示しますので参照ください。
(5)吸着力について
 次に、気孔径10μm(NPP-230W)の多孔質セラミックスを使用した真空チャック(□100)の吸着力(垂直方向への引き剥がし力)を調査した結果、Graph2に示すようにワーク□101の全面吸着においては、気孔径0.5μm(NPP-125W)の真空チャックと同様に真空度-96kPa、吸着力65kPa(約660g/cm2)が得られており、比較用の溝加工品(60%が溝、SUS材)と比較すると下回るものの、十分な吸着力を示しております。しかしながら、ワーク□30や□50での
部分吸着性能については、同じ真空度においてもNPP-125Wと比較して若干吸着力が弱くなります。
また、気孔径を大きくしたことにより、開放部(吸着範囲外)からのエアー流入量が増加し真空度を上げることが難しくなるため、NPP-125Wの真空チャックと比較すると部分吸着性能を保つことは難しくなります。
(6)湿式使用について
NPP-230Wについては気孔径が10μmと大きくなったことにより、Fig.5のように真空チャックを水中に浸した状態であっても真空吸着することができ、NPP-125では対応不可であった湿式での使用も可能となりました。
<製品形状について>
○NPP-230Wでは多孔質セラミックス部分が最大□250、φ210、NPP-125W、Dでは最大□350、φ350となって
 おります。それ以上のサイズの場合は貼り合わせによる製造となります。
○真空チャックの枠についてはSUS系、アルミニウム系があり、表面処理により黒色にすることも可能です。
 また、高温仕様としてアルミナ枠による製造も行なっております。
○詳しいサイズ・形状・精度等についてはご相談ください。
○ワークの吸着等は実際にテストして確認しなければ分からないこともあります。
 当社HPよりデモ機の貸し出しを致しておりますので是非当社へご相談ください。

3. ロールタイプ真空チャックについて

連続したフィルムや金属箔、紙などを搬送、表面コートする用途においてはサクションロールと呼ばれるロールタイプの真空チャックが使用されております。現在、このロールタイプの真空チャックは金属製でスルーホールタイプやワイヤーやメッシュを巻きつけたものが主流ですが、フィルムなどの薄型化やコート面の高品質化に伴い、巻き取りにおいてテンションが掛けられなくなる問題やテンションカット時の吸着痕の問題などが発生しております。
その解決策として、平面タイプで培った吸着痕を残さない当社の多孔質セラミックスを用いたロールタイプの真空チャックについて開発を進めておりますので、その特徴をご紹介いたします。
<特徴>
@多孔質セラミックスにNPP-125D、W(気孔径0.5μm)を使用することにより平面タイプと同様に面粗さ(Ra)を
 0.4μm以下にすることが可能であり、吸着痕の問題が解決できます。
A多孔質セラミックスNPP-125D、Wの部分吸着性能を利用することにより、ロール内部の間仕切りが不要の
 ため、フィルムの吸着角度が自由に変更できます。また、ベアリングをシャフト両端に取り付ける方式と
 なるため構造を複雑にすることなく製作が可能です。
B加工精度については、ロール単体(φ160×300L)にて円筒度3μmが可能です。
C吸着力としては、Fig.7のような簡易的な評価ですが、吸着部φ160×300Lの真空チャック上に幅120×20〜
 60×厚み0.1mmのポリエチレン製シートを吸着(真空度-50kPa)し、ロール外径の接線方向に引っ
 張った際にすべり始めた数値を評価した結果、約6.5×10-3(N/mm2)の引張強度が得られました。
 *真空チャックの固定、フィルムの伸びの関係で小さなサイズで評価しております。
D耐熱性についても材質および構造を
 検討することにより、50〜150℃×12時間保持後に冷却というサイクルを5回繰り返しても吸着面表面に
 クラックなど発生せず、吸着性能にも変化はありませんでした。
<製品形状について>
開発中であり、製作実績は外径φ200×幅300Lとなっておりますが、詳しいサイズ・形状・精度等についてはご相談ください。

(セラミック部 製造技術Gr: 安河内・毛利(昇))

ニッタン技報 

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