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第31号磁気ヘッド基板材について−マルチメディアを支える縁の下の力持ち−

1. はじめに

 現在の情報化社会を支えているのは、大量の情報を正確に記録するストレージ(記憶装置)です。なかでも、高速・大容量の特性を活かし、数あるストレージの核となるのが磁気記録装置(HDD、図1)で、近年パソコンのみならず、デジタルビデオやカーナビゲーションシステム、携帯端末やゲーム機までその用途は急速に広がっています。
 HDDの中で情報を読み書きする根幹部品が磁気ヘッドです。この磁気ヘッドは、Al2O3−TiC(AlTiC)からなるセラミックス基板上に、ICと同様に薄膜形成、フォトリソグラフィの技術でその素子が作製されます(図2)。当社は、この磁気ヘッド用セラミック基板を住友特殊金属(株)と共同開発し、以来20年間に渡り品質改善、安定供給に努めてきました。現在当社が製造しているセラミックス基板“AC−7、AC−72”は、磁気ヘッド基板のスタンダードとして世界に広く使用され、その品質は高く評価されています。

2. 磁気ヘッド基板に要求される品質

 磁気ヘッドの模式図を図3に示します。磁気ヘッドはAlTiCからなるスライダ上に形成されており、スライダは、ディスクの回転によって生じる空気流によって、ディスク上を浮上しています。ディスクには磁性膜が塗布されており、電磁石である磁気ヘッドが磁気的に情報を読み書きする原理です。
 HDDは10年で100倍の勢いで記憶容量が増大してきました。現在では、1平方インチあたり100Gビット(新聞約30年分の情報に匹敵)もの情報を記録できるまでになっています。このHDDの高容量化は磁気ヘッドの性能向上の歴史でもありました。とくに、ヘッドとディスクの間隔を小さくすることが重要で、間隔が小さいほど、ディスクのより小さいエリアに正確に情報を読み書きでき、記録密度は大きくなります。現在この間隔は、10nm程度にまで小さくなっています。スライダを全長50mのジャンボジェット機に例えると、地上わずか0.4mmを超低空飛行していることになります(図4)。
 この超低浮上は、スライダの浮上面に、流体工学やトライボロジに基づいた複雑かつ精密な加工を施すことで初めて実現されます。よってスライダ(基板)材には、ナノレベルで正確に加工できる性質が求められ、極めて小さな欠陥も許されません。このようなヘッド特性向上の観点のみならず、信頼性や生産効率からの要求もふまえると、基板材に求められる主な特性は、以下のようになります。
 1.精密に加工できること。
 2.加工面が極めて平滑なこと。
 3.これらの加工(切断、研磨、イオン加工)が効率よく容易に行えること。
 4.加工や熱処理によって歪まないこと(残留応力が均一であること)。
 5.気孔や異物などの欠陥がなく、組織が均質であること。
 6.機械的な強度や剛性、靱性に優れ、耐摩耗性があること。
 7.熱的・化学的に安定であること。
 8.磁性を持たないこと。
 9.熱伝導に優れ、適度な熱膨張係数を有すること。

3. AlTiCの歴史と特徴

 無数にある材料の中、現在、磁気ヘッド基板材としてAlTiCに勝るものは存在しません。このAl2O3−TiCセラミックスは、もともと緻密で強靱な構造用材料として、熱間加圧焼結技術を駆使し、当社が世界に先駆けて開発したセラミックスです。
 Al2O3セラミックスの脆弱さを補うためTiC粒子を分散させましたが、強度・靱性の向上だけでなく、TiCを添加することによって機械加工し易い性質も付与されました。さらに、微細加工には研磨やイオンミリングが用いられますが、複合材の場合、研磨速度やミリング速度は個々の粒子ごとに異なり、研磨面やミリング面には多少なりとも凹凸が生じます。しかし幸運にも、Al2O3とTiCはこの加工レートがほぼ同等であり、あたかも単一組織からなる材料のように極めて平滑な加工面を得ることができます。Al2O3とTiCは、まさに魔法の組み合わせと言えます。
 さらに、厳選された原料を用い、コンタミフリーなプロセスを構築することで高純度化を図り、独自の加圧焼結技術を駆使することで、微細で緻密、かつ均質な焼結体を得ることに成功しました。磁気ヘッド基板用として究極にチューニングされたAlTiCが、当社の基板材“AC−7、AC−72”です。

4. おわりに

 昨今、ナノテクノロジーが一大ブームになり、産学官を問わず盛んに研究されています。しかし実用化、商品化となると簡単ではなく、もう少し先のようですが、唯一磁気ヘッドはナノテクノロジーを実現していると言われております。当然、基板材にもそれに見合う高い品質が要求されます。
 また、垂直磁気記録やトンネルMRヘッドなど、記録密度向上のための、新たな技術も実用化の段階に入ってきました。現在のAlTiC基板では不十分である、AlTiC基板の特性や品質をさらに改善せよと、お客さまの声も聞こえ始めました。当社はこの要求に応えるべく、基礎研究や応用技術開発に努め、将来に渡り、磁気ヘッドやHDDを支えていきたいと考えています。

(セラミック部 味冨)

ニッタン技報 

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