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第31号 耐食耐摩材料『TX-1』高密度タングステン“ヘビーアロイ”

1. はじめに

 今回は当社の粉末冶金技術をもとに商品化されております高密度タングステン合金「ヘビーアロイ」についてご紹介致します。タングステンは融点が3380℃であり金属中最も高く、比重も19.3g/cm3と大きい金属であり、各種ランプや電子管のフィラメント、ヒータ、帯電ならびに放電電極材料等に広く用いられています。しかし一方で難加工材であり、非常に酸化しやすいなどといった問題点もあります。ヘビーアロイはこういった問題点をカバーしながらタングステンの特性を活かし、様々な用途への応用を可能にした材料です。

ヘビーアロイとは?

ヘビーアロイはタングステンを主成分とし、バインダー相をNi、Cu、Feなどで構成したタングステン基焼結合金です。その材料特性を表1、内部組織写真を写真2に示します。
材料名HAC1HAC2HAF1HAF2HAX1
組織(wt%)W-4Ni-2CuW-4Ni-2CuW-2Ni-1FeW-5Ni-2FeW-Ni-Fe-α
密度(g/cm3)18.417.818.417.418.0
硬度(HRB)10810329(HRC)34(HRC)31(HRC)
抗折力(MPa)11001200140010001400
伸び(%)0.51.012.21.010.0
磁性非磁性非磁性弱磁性弱磁性弱磁性
材料の特徴として次の点が挙げられます。
 ・高比重である。
 ・放射線のしゃへい力に優れている。
 ・タングステンと比較して機械加工が容易である。
 ・機械的強度が高い。
 ・低熱膨張、高熱伝導である。
 ・耐酸化性に優れている(HAX1)。

3. 製品用途

 ヘビーアロイはこれらの特徴を活かして様々な分野に用いられています。高比重であり機械加工も容易であることからウエイト材(おもり)として広く使用されています。また高比重であることから放射線のしゃへい力に優れており、医療用・工業用X線装置のしゃへい材としても使用されています。これらのウエイト材やしゃへい材といった製品分野では、近年、環境面からこれまで使用されていた鉛が問題となるケースが増えてきており、その代替材として注目されています。
 その他、低熱膨張、高温での優れた機械的特性、耐酸化性からアルミ合金や銅合金のダイカスト金型部品や半導体関連部品としても使用されており、電極材としてはハンダメッキ銅線を溶接する際のワイヤーチャック電極として、従来の銅合金電極からの高寿命化へ実績があります。

4. 放射線のしゃへい力

 ヘビーアロイの放射線に対するしゃへい力について鉛との比較評価を行いました。図1はヘビーアロイ、鉛の厚みを変えた場合のγ線(Co60)の減衰率変化をそれぞれ示したものです。今回の評価で対象としたγ線(Co60)は原子力発電所等で問題となる比較的高いエネルギー領域の放射線です。
 この結果から、例えば厚み約3mm、7mmのヘビーアロイはそれぞれ厚み約4.5mm、10mmの鉛相当のしゃへい力を有していることが分かります。つまり、γ線(Co60)に対してヘビーアロイは鉛の1.5倍程度のしゃへい能力を持っていることになります。

5. 耐酸化性

 従来タングステンは非常に酸化しやすい金属であり、室温でも表面に僅かな酸化被膜をつくり、約400℃付近から酸化します。ヘビーアロイはタングステンを主成分としながらある程度の耐酸化性を有しており、その中でもHAX1(W−Ni−Fe−α)は特に耐酸化性に優れた材料です。図2はヘビーアロイHAC1、HAF1、HAX1の酸化条件下(大気中700℃×3hr)における酸化増量を比較したものであり、HAX1が優れた耐酸化性を有していることが分かります。この耐酸化性から高温条件下で使用されるダイカスト金型部品や半導体関連部品の分野で実績を上げています。

6. 機械加工性について

 難加工材であるタングステンは、切削加工が困難であり、加工は一般的にダイヤモンドホイル等による研削加工や放電加工に限られます。ヘビーアロイはこの難加工材であるタングステンを主成分としながら、超硬切削工具による加工を可能とした材料です。写真3、4のようなフライス加工やエンドミル加工、タッピング等により、用途に応じた様々な形状への加工が可能です。

(電在部品部 製造技術Gr 向江信悟)

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