剪断加工とは、ワーク(被剪断材)を上下の刃に挟んで切断する加工で、金型抜き加工と切断刃加工に大別されます。切断刃には、断裁刃などに代表されるようなシャーナイフと、スリッターに代表されるようなロータリーナイフが存在します(Fig.1参照)。切断されるワーク(被剪断材)には、布・紙・樹脂フィルム・金属箔等があり、また近年では焼結前のセラミックシートなどの切断にも使用されております。そのため、高い耐摩耗性と、剛性が要求され
る様になりました。これら市場の要求に応えるため、当社独自の超硬合金製造技術を応用し、超硬製切断刃を商品化してきました。超硬製切断刃は、スチール製と比較しても、約10−50倍の寿命を有し、さらに切断面の品質の向上、切断装置の省力化、無人化に貢献し、高い評価を得ることが出来ました。
(1)シャープな切れ味
超硬合金は、一般的な刃物用スチール(SKH51)と比較した場合、ヤング率が約2.5倍(約540GPa)と剛性が高いため、高い刃先先端応力を発生します。つまり、ワーク(被剪断材)を切断する際、刃先が逃げにくい性質を有しています(Fig.2参照)。そのため、ワーク(被剪断材)切断面の品質が格段に向上し、その状態を長時間持続することが可能になります。特にスチール製刃では困難だった繊維質のワーク(被剪断材)や、薄いワーク(被剪断材)の切断を可能としただけではなく、その切り口の品質を格段に向上する事に成功しました。
(2)ランニングコストの削減
超硬製切断刃を使用した場合、剛性が高い性質を有しているため、作用し合う刃どうしを強く押さえつける必要はありません。刃先がわずかに触れる程度で、十分な切断特性を得ることが出来ます。そのため、刃先に与えるダメージを最小限にとどめることができ、刃先摩耗を遅らせ、さらに超硬合金本来の耐摩耗性との相乗効果により、スチール製の刃物と比較して約10−50倍の刃具寿命を達成しています。長寿命化によって、製造ラインの手離れ化、自動化が可能となり、ランニングコストを大きく削減することが出来ます。
(3)様々な用途に対応
超硬合金は、高い硬度(HRA90以上)を有するため、従来切断が困難であった金属箔や繊維質のワーク(被剪断材)にも使用するこ
とが出来ます。また、ワーク(被剪断材)に適した刃先形状にする事により、耐欠損性を向上し、より信頼性の高い刃物として使用される様になります。
(4)ソリッドナイフの利点
スチール製ナイフや、従来のロウ付けナイフでは、熱処理を施すため、長期間使用しなかった場合、内部応力の影響により歪みが生じます。また、再研磨によっても、内部応力の均衡が崩れるため、
変形が生じます。超硬合金は、硬質粒子であるタングステンカーバイト(WC)と主にコバルト(Co)を主とする結合金属からなる独自の構造のため、熱による歪みがきわめて小さくなっております。また、超硬合金は、熱膨張係数がスチールと比較して半分、ステンレスの1/3と非常に小さいことも特徴の一つです(6.0×10-6/℃)。ロウ付け時には、この熱収縮の差により、大きな歪みエネルギーを内部に蓄え、再研磨の際に変形を生じますが(Fig.3参照)、ソリッドの刃物にすることにより改善されます。精度を要する加工、高温雰囲気下での精密加工など、超硬ソリッドナイフのご使用を推奨いた
します。