技術情報

第35号 高密度タングステン合金『ヘビーアロイ』大型製品の紹介

1.はじめに

超硬合金や銅タングステン系接点材料は前者では高硬度、高耐摩耗性や耐食性、後者では耐アーク性、高電気伝導性や高熱伝導性などの特徴を有することから主に機能材料として使われています。したがって、通常は機能が生かせる程度の比較的小さな製品に多く使われていました。

2.機能性部品の大型化で高付加価値化に貢献

2-1.超硬合金製部品の大型化
2-1-1.超硬合金製ロータリーカッター
高合金製ロータリーカッターの超硬化に成功し、従来の10倍以上の長寿命を達成しました。大型でもあり超硬合金化が困難とされていた分野の開発です。特に3次元の刃立加工技術の開発など技術的にも高度で、業界からも高く評価されています。紙おむつ、サニタリーナプキン、貼薬等、紙や合成繊維を含む製品のロータリーカッターとして広く応用されており、当社の主力商品となっております。実績最大サイズはφ350×200L、φ250×400Lであり、これにミクロンオーダーの刃立加工をを施しています。なお、高精度、高耐摩耗性の機能を確実に発揮できるようにユニットとしてのアッセンブリーも行っております。(写真1参照)

2-1-2.拡散接合による長尺製品

従来、長尺の断裁刃および丸棒の製品は困難とされていました。短尺の焼結体を拡散接合法により連接する技術を開発し、5000mm以上の長さの断裁刃および、丸棒の製造も可能になりました。接合部は母材と全く同一製品であり、信頼性が飛躍的に向上しており、又、拡散接合前にHIP処理を施せば強度も更に向上します。現在、長尺商品としての紙の断裁用刃物を始め、圧延用ゼンジミアロール、クイルなどに広く使用して頂いています。(写真2参照)

2-3-1.耐食性シールリング用超硬合金

強酸、強アルカリ溶液等過酷な腐食条件下で使用される耐食性超硬合金を開発しました。その一つは、コバルト等のバインダーを全く含まない高硬度の耐食超硬合金(材種名;RCCL)で、もう一つは、Ni−Cr−Mo系をバインダーとする高強度の耐食性超硬合金(材種名;NR8、NR11)です。これらの超硬合金は、海水ポンプ、原子力関係の軸受、シールリング等として充分な性能を発揮し、好評で今後の用途拡大も期待されています。実績最大サイズは、いずれの合金もφ450×40Hであり、広範な御要求に応えられます。又、これ以上のサイズも製作可能ですのでご相談下さい。(写真3参照)

2-1-4.スリーブ用超硬合金

超硬合金は最近では大流量のポンプである縦軸斜流ポンプの軸を支えるスリーブ、ベアリングなどとしても使われ始めました。このポンプは、ポンプの起動時には乾式で、運転時には湿式で(海水、河川水などで砂などを含む場合が多い)運転されます。したがって、耐食性・耐摩耗性ばかりでなく、耐摺動クラック性(耐熱クラック性)も要求され、最も厳しい用途のひとつであり、WC−Cr−Mo−Ni系超硬合金が広く使われるようになりました。更に、海水用ではTiを結合相とする強耐食性合金TW−3なども利用されています。実績最大サイズはφ300×300Lですが、更に大きなサイズも製作可能ですのでご相談下さい。(写真4参照)

2-2.接点材料部品の大型化

2-2-1.大電圧ガス遮断器用抵抗体シールド
ガス遮断器において、銅タングステン合金は電流を遮断する接点部やその周辺にある抵抗体のシールドに使用されます。最近、電力設備増強のための高電圧化、大容量化に伴い、1,000kVガス遮断器が開発されました。この時のシールドの外径はφ300を越えるもので、このような大きさの銅タングステン合金の製造は困難とされていました。弊社では長年培った銅タングステン合金の製造技術を駆使することにより、このような大型の合金についても製造することが可能となりました。(写真5参照)

2-2-2.放射線遮蔽材

放射線の遮蔽には多くの場合、水、特殊コンクリートが使用されています。また、鉛も放射線を通さないことでよく知られています。この放射線の遮蔽は一般に原子番号の大きい元素ほど高い効果を持っています。この観点から、遮蔽材として鉛よりも原子番号が大きく、高い比重を持つタングステンが注目されています。特に、ヘビーアロイ(重合金)と呼ばれるタングステンにニッケル、銅などと合金化した材料は機械的強度、加工性に優れており、遮蔽板やコリメータに使用されています。このヘビーアロイの大型品はその製造工程、特に成型。予備焼結工程において困難な点が多く、弊社ではこれらについて独自の技術を開発し、φ200×80Tのリング形状やφ140×270のコリメータを始め多くの大型製品の実績をあげてまいりました。大型のヘビーアロイの御注文の際は御相談下さい。(写真6参照)
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3.新複合材料による大型化

2.で紹介しましたように材料自身の大型化によりユーザー製品の高付加価値化に貢献してきました。しかし、さらに大きくするため、またコストを削減するためには複合化することが必要です。弊社ではこれに応えるべく、次の技術も開発しています。

3-1.摩擦圧接

ガス遮断器などの接点はシャンク(台金)にろう付けして使用されます。ところが、最近では遮断時に発生するアークやジュール熱により接点の発熱は高くなる傾向にあります。そのため、接合部ろう材の融点近くまで上昇する場合も起きており、接点脱落の可能性がでてきました。弊社ではこれに対応すべく、摩擦圧接による独自の接合技術を開発し、高品質でしかもばらつきの少ない接合品の商品化に成功し、数多くの実績を上げています。この方法は長尺製品ほど有利であり、弊社ではφ30×1000程度の製品の製造が可能であり、現在、更に大型化、長尺化を検討しています。(写真7参照)詳しくは『Cu−w合金とクロム銅の摩擦圧接』をご参照下さい。

 

ニッタン技報 

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