技術情報

第33号 セラミックの材料特性セラミック実装用ツール

1.概要

 今回は、高品位な諸特性を利用し、微細で精密な加工ができるセラミック実装用圧着ツールについてご紹介いたします。圧着ツールとは、半導体とプリント基板やフィルム等を接合する治具の事です。

2.セラミック材料について

 セラミック材料にはいろいろな種類があり、それぞれに機械的性質、熱的性質、電気的性質に違いがあります。それぞれの特性に合
わせた圧着ツール材料を用意しておりますので、材質についてご紹介します。
(1)緻密で均一な当社セラミック材料は、基本的にHIP処理を行っております。HIP処理とは、Hot-Isostatic-Pressing(熱間静水圧加圧)の頭文字を意味しており、一度焼結したセラミック素材を1000℃以上、1000気圧以上のガス圧でさらに焼き固めることであります。この処理によってほぼ理論密度近くまで緻密化し、ポアなどの欠陥が極めて少ない均一で高品位な材料が出来上がります。
(2)高硬度、高強度、高靭性な材料加熱圧着ツールは基本的に耐摩耗部材であり、また、構造用部材であります。それゆえ、高硬度、高強度、高靭性といった機械的性質が必要となりますが、上記、HIP処理を施した当社セラミック材料は、卓越した機械的性質を有しております。よって、このような用途には適した材料であります。

 以下に各材質について、ご説明いたします。

3.各種材質について

(1)AlN(窒化アルミニウム)“NPL−2”
 セラミックスの中で最も熱伝導性の高い材料である窒化アルミニウムには、硬さ、強度、靭性が低いという欠点がありました。しかしながら、当社の“NPL−2”は優れた熱伝導率を維持しながら、独自の組成と製造方法によって結晶を微細化しております。さらに、HIP処理することによってほぼ理論密度に達する緻密な焼結体となり、靭性や強度が大幅に向上します。
 機械的性質はもとより、ポアがきわめて少ない結晶組織となっておりますので、優れた鏡面ラップ面が得られる面精度が高い材料
となっております。
 写真1に“NPL−2”の走査型電子顕微鏡による結晶組織を示します。またP8、9に物性表を掲載しております。結晶が微細となり、ポアが少なくなることによって、機械的性質で硬さ、強度、靭性が向上していることがわかります。

(2)Si3N(4 窒化珪素)“NPN−3”
 “NPN−3”は汎用Si3N4材料とは異なり、鋳鉄部品などを切削加工する工具に使用される緻密で強靭な材料であります。“NPL−2”同様に独自組成の焼結体をさらにHIP処理してほぼ理論密度まで緻密化した高品位なセラミック材料であります。汎用のSi3N4材料に比較して、1.5倍以上の強度、ワンランク上の靭性を有しておりますので破損に対して高い信頼性を示すとともに、ポアが極めて少ない緻密な材料ですので、優れた面粗度や鏡面精度を示します。
 P9に“NPN−3”の諸特性の比較、写真2に走査型電子顕微鏡による結晶組織を示します。
“NPL−2”同様に、結晶が微細となり、ポアが少なくなることによって、機械的性質で硬さ、強度、靭性が向上していることがわかります。

4.熱的特性について

 高温に加熱して使用するツールの場合には、熱伝導性に優れることが求められますが、同時に熱を遮断し、効率的に使用することも求められています。弊社では、求められる熱容量や熱的特性に対応した材質を使い分け、目的と仕様に応じて対応しております。�

(1)高熱伝導セラミックス
 高熱伝導を要求される用途、例えば、パルス型ヒーター用には200W/mKレベルの“NPL−2”を推奨しております。前述の通り、高い熱伝導率とAIN材料としてはトップレベルの強度や靭性を有しております。

(2)低熱伝導セラミックス
 断熱を目的とした用途には、金属の100分の1以下である数W/mKレベルの熱伝導率を示すZrO2セラミックス“NPZ−10”もしくは、“NPN−3”を推奨しております。ともに高強度、高靭性な材料でありますので、ツールと金属シャンクに挟み込む中間層のような用途にも最適であります。

(3)その他
 両者の中間的な熱伝導率を求められる用途には70W/mKレベルSiCセラミック�“NPS−1”を推奨しております。

5.加工について

 ツールとしての機能は、材質のほかにどのような形状にも対応可能かということが挙げられます。相手部品の小型化、精密化によってツールの微細加工や精密形状への対応が重要な要素となります。当社では、小型から大型の部品に対し、焼結から加工まで対応できる技術を確立しました。以下に説明いたします。

(1)小型化への対応
 ツールの小型化や精密化に伴なって、微細加工や面精度の高精度化が求められています。当社では冶工具類の考案や各工程での製
造方法を検討することにより、小径穴などの微細加工が可能となり、また、材料に合わせたラップ方法の技術開発によって優れた面精度をもつセラミック部材の製造が可能となりました。一例として、写真3に“NPL−2”に50μmの穴を明けた状態を示します。穴は真円に近く、割れや欠けのない良好な形状となっております。“NPN−3”、“NPL−2”ともに緻密でポアのない同材料の面粗度はRaが10nm以下と、優れた面精度を実現することが可能です。

(2)大型化への対応
 小型化の一方で、大型化の動きがあり、大型部品であっても小型部品の精度を反映した高精度な要求が高まっており、当社でも大型部材の製造技術と微細加工技術を組み合わせて、市場の要求にマッチした製品として対応できる体制を整えております。
 写真4は500mm長さの“NPN−3”の棒状ツールですが、平面度3μm以内となる精度で製作されております。
 このように、優れた材料と独自の精密加工技術を融合して今までにない緻密で高精度なツールを製造することが可能となりました。

6.まとめ

 当社のセラミック製品製造のノウハウを活かした材料設計を付加し、個別のお客様向けにツールをご要望に応じた形状で製作いたします。ご一報頂ければ、幸いに存じます。

ニッタン技報 

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