日本タングステン・基山工場を訪ねて
日本タングステンが誇る『超硬合金』は耐食性・耐摩耗性などに優れた素材で、高精度な製品に加工されることで、社会のさまざまな分野で活用されています。当社の基山工場で生まれる『超硬合金製リング・スリーブ』もそのひとつ。
普段は人の目に触れませんが、産業や社会基盤を支える重要な役割を担っています。
発電所や化学プラントなど社会の産業基盤を支える多くの施設では、ポンプや撹拌機などさまざまな回転機器が多用されています。現在は、「メカニカルシール方式」と呼ばれる、モーターや軸を効率良く回転できる方式が多く用いられています。メカニカルシール方式は、内部で回転する軸と外側のポンプ管などとの間にミクロン単位の隙間をつくることで、液体が漏れ出さず、機器の摩耗も防ぐことができるシール方式です。メカニカルシール方式に使用されるスリーブや、メカニカルシールの継ぎ目部分に使われるメカニカルシールリングには、高い寸法精度と、耐食性や耐摩耗性に優れた素材が求められています。
ここで活躍しているのが当社の超硬リング・スリーブ製品です。
当社の超硬リング・スリーブ製品の主力素材『バインダレス超硬合金』
耐久性の高いスリーブや、メカニカルシール用のメカニカルシールリングは、以前から様々な場面で求められていました。例えば海水の汲み上げポンプは常に海水にさらされているため、耐食性に優れた部品が求められます。また、メンテナンスによる装置停止はできるだけ少なくする必要があります。
当社の超硬リングは、30年以上前から製品化され、好評いただいています。現在、当社で製造されている超硬リング・スリーブ製品の約7割には『バインダレス超硬合金』が使用されています。バインダレス超硬合金は、従来の金属相を複炭化物相に置き換えた材料であり、コバルトやニッケルなどの金属成分を含まず、硬さと、高い耐久性が特徴です。
素材から製品加工まで一貫した体制
もうひとつ重要なことが「製品の精度」です。素材から加工・検査まで一貫した生産ができる当社では、用途に合わせた素材を粉末から調合して生み出すことが可能です。加えて、素材を知りつくしている製造現場では、ミクロンの精度で加工を行っています。機械での加工と併せて、人間の感覚が必要とされる微細な作業は手作業で行います。材料と加工の両方の技術が融合することで、信頼性の高い製品が生まれるのです。当社では、数百個・数千個単位の量産品はもちろん、数個単位の特殊用途品のご注文も多くいただいています。
将来はクリーンエネルギーでの利用も
発電施設内部のポンプなど、一度稼働を始めると簡単には取り換えができない場所に多用されていた当社の超硬リング・スリーブ製品ですが、今後はクリーンエネルギー分野への広がりも期待されています。これまでの経験や実績を活かし、風力や波力などので発電設備でも信頼性の高い製品をご提供します。
また、数年前から、超硬リング製品向けの新素材『カーボン分散型バインダレス超硬合金』もご提供しています。素材断面に微細な凹凸を生じさせることで自己潤滑作用を持たせた超硬材料であり、リングやスリーブに用いることで、装置のより安定的な稼働が期待できます。
今後もお客様のニーズに合わせて、新しい材料の開発、加工技術の工夫に取り組んでまいります。