独自の技術と原産地・中国との密接な関係から生み出される日本タングステンの製品の数々。その現場である飯塚工場と高い技術のもとで行われる精製・還元・焼結工程をご紹介します。
日本タングステンは、福岡県飯塚市・宇美町、佐賀県基山町に製造工場を持ち、飯塚工場は昭和45年の開設。タングステンを主とする金属加工生産を行っています。採掘されたタングステン鉱石が製品としてのタングステンになるためには、精製、還元、混合、成形、焼結、加工といった工程を経なければなりません。今回はその中でも特に「精製・還元」について詳しく触れてみたいと思います。
中国から輸入したAPTを製品に
まず、タングステンの生産過程は高純度に精製された原料粉末から始まります。これはパラタングステン酸アンモニウム(APT)といわれるもので、中国で製造した粉末を輸入しています。
世界のタングステンの83%を産出する中国ですが、かつての精製技術は低いものでした。しかし、「現在は、当社を含めた海外の技術導入により、高い基準をクリアする原料粉末を生産しています」(品質保証部主幹・飯塚品質管理グループリーダーの伊藤博)。文化や価値観の異なる中国の地でさまざまな問題を乗り越え、解決し、辿り着いた成果です。
APT→BO→W(タングステン)と純化する工程
飯塚工場に送られてきたAPTは白いパウダー状。そのきめの細かさは、高純度精製の賜物です。ただし、これでも純度はまだまだ。本格的な工程はこれからです。
まず、APTは加熱分解されて青色粉末のBO(ブルーオキサイド)になります。BOはアルミニウム・カリウム・シリコンの溶液調合したものをドーピング(添付)し、さらに高圧力による成型、通電による特殊焼結を経て、緻密なタングステンインゴットになります。このタングステンインゴットが、タングステンの線や棒製品になっていくのです。この過程での、粉末調合調整技術・特殊焼結技術は日本タングステンが長年培ってきたものです。
99.999%という高純度製品も
飯塚工場では、プロジェクターのランプなどに利用される99.999%という高純度のタングステン粉も製造しています。また、APTを加熱分解した黄色粉末のWO3(三酸化タングステン)も製造しており、これは光学ガラスや触媒、試薬、セラミック製造用原料などに利用されます。
花粉の十分の一以下という超微粉末のきめ細かな美しさ、そして鮮やかな発色。APTの白、BOの青、WO3の黄色は、飯塚工場のシンボルカラーと言えるかもしれません。