仕事函数が低いほど金属の電子放出特性は良い。タングステン自体の仕事函数は4.5eVで必ずしも低くないが、蒸気圧が小さく電極温度を高くできるため、電子放出材料として広く用いられる。タングステンに酸化トリウムや酸化ランタンあるいは酸化セリウムなどを少量添加した合金が放電灯の電極やTIG溶接の放電電極に用いられている。タングステン中の酸化トリウムや希土類酸化物は高温で還元され、粒界を通って拡散し、タングステン表面に単分子膜を形成してタングステンの仕事函数を下げる。トリウム単分子膜で被覆されたタングステンの仕事函数は2.6eVになる。タングステン表面に酸素の単分子膜が形成されると仕事函数は高くなる。
粉体粉末冶金用語辞典 より
編者:(社)粉体粉末冶金協会
発行所: 日刊工業新聞