最も安定な酸化物は六価の三酸化タングステン(WO3)で、金属を酸化すると最終的にWO3が得られる。工業的にはパラタングステン酸アンモニウム(APT)またはタングステン酸を大気中900〜1,000Kで加熱分解してつくられる。黄色の粉末で、密度は7.16Mg/m3、融点は1,746Kである。空気中で加熱すると1,100K以上で昇華が始まり、1,400K以上で激しく昇華してWO3の白煙を出す。水蒸気の存在で揮発性が増す。水酸化アルカリに可溶、アンモニア水には不溶。酸には不溶、ただしフッ酸には可溶。空気中では比較的安定であるが、有機物の存在でわずかに還元されて表面が黄緑色を呈する。高温で他の多くの金属酸化物とタングステン酸塩をつくる。水素中加熱により比較的容易に還元され、低級酸化物を経て金属タングステンとなる。低級酸化物にはW20O58(紺色)、W18O49(紺色)、WO2(褐色)、W3O(黒)がある。タングステン製造の原料として用いられるほか、触媒やセラミック添加剤としても使われる。最近ではエレクトロクロミック材料として注目されている。