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タングステンの粉体粉末冶金用語事典

    タングステンの延性−脆性、破壊遷移温度

タングステンの延性-脆性遷移温度 ductile-brittle transition temperature of tungsten

 タングステンの延性-脆性遷移温度(DBTT)は表面状態、結晶粒径。あるいは不純物により200〜700Kの間で大きく変化する。電解研磨で表面を平滑にするとDBTTは低温側に移動する。また表面を薄く酸化してもDBTTは低くなる。結晶粒径の小さいほどDBTTは低くなり、平均粒径が0.001mm付近になるとDBTTは室温以下となる。材料を1,300Kあるいはそれ以上の高温にさらすと、結晶粒成長によりDBTTは高温側に移行する。特に1,800K以上の高温では粒の粗大化が起こりDBTTは600〜700Kまで上昇する。不純物として酸素や炭素が固溶するとDBTTは上昇する。800K以上でC,Fe,Ni,Crなどと合金を形成し、DBTTは著しく上昇する。
                                                         

タングステンの応力-ひずみ曲線 stress-strain curve of tungsten

 線引き上がりの線材は降伏点がなく図(a)のような応力-ひずみ曲線になる。加工度が大きくなるほど応力は高く、伸びは小さくなる。二次再結晶した線はほとんど塑性変形せず、図(b)に示すような応力-ひずみ曲線となる。

      タングステンの応力-ひずみ曲線

   (a)線引き上がり後      (b)再結晶後

タングステンの低温脆性 low temperature brittleness of tungsten

 タングステンを高温から冷やしていくと、ある温度以下で急に脆くなる。この温度を延性-脆性遷移温度といい、延性-脆性遷移温度以下で現れる脆性を低温脆性という。タングステンの加工は低温脆性の見られない延性-脆性遷移温度以上で行わなければならない。タングステン焼結体の延性-脆性遷移温度は600〜700Kと高く、室温で低温脆性が見られる。十分加工が進むと延性-脆性遷移温度は室温以下になり、室温で延性が見られるようになる。焼鈍により結晶粒が大きくなると延性-脆性遷移温度は上昇して再び室温で延性を示さなくなる。タングステンの低温脆性は粒界が弱いことに起因する。低温脆性で見られる破断は粒界破壊とへき開破壊である。                                                      

タングステンの破壊 fracture of tungsten

 6族遷移金属で共有結合性の強いタングステンは粒界が弱く、粒界が破壊の起点となることが多い。延性-脆性遷移温度以下で低温脆性破壊を超こす。繊維組織の多結晶では粒界を起点とする粒界破壊ならびに粒内脆性破壊となり、単結晶ではへき開破壊となる。へき開は{100}面に沿って起こる。延性-脆性遷移温度以上ではネッキングを生じ、チーゼル形の延性破壊となる。繊維組織をもつ線引き上がりの多結晶タングステンでは、1つ1つの結晶がチーゼル形の延性破壊を示す。高温で再結晶した多結晶組織では粒界破壊とへき開破壊が観察される。高温度・低応力下で長時間使用した場合は粒界にキャビティが成長して粒界から破壊する。
                                                          

タングステンの破壊脆性 fracture toughness of tungsten

 破壊執性は脆性クラックの進展に対する抵抗の大きさを表す。破壊脆性は温度や結晶粒形状の影響を受ける。タングステンの室温における破壊脆性はおよそ15MPa/m 1/2程度である。温度が上昇すると破壊脆性は向上し、脆性クラックは拡大しにくくなる。クラックは粒界に沿って進展しやすい。細く長く入り組んだ結晶粒は破壊脆性が高い。再結晶を起こして粗大結晶になると破壊脆性は小さくなり、クラックが進展しやすくなる。
                                                          

タングステンの疲労強さ fatigue strength of tungsten

 タングステンの疲労強さは静的破壊応力のおよそ1/3〜1/4である。破壊の起点は応力集中部である。疲労強さは表面状態や不純物の分散状態、あるいは組織に影響される。応力集中する傷が無いように電解研磨で表面を滑らかにすると疲労強さは向上する。酸化ナトリウムなどの酸化物が添加されている場合、表面近くに酸化物の凝集があると応力集中の場となり、疲労強さが低下する。                

タングステンの照射脆性 irradiation embrittlement of tungsten

 金属材料に中性子を照射すると、一般に硬度と引張強度が増し、延性が低下する。これは原子の格子点からのはじき出しによる欠陥の増加と核反応による不純物元素の生成に起因する。また脆性遷移温度が上昇し、脆性が劣化する。タングステンは照射脆性が比較的大きい。特に再結晶した材料では照射脆化が著しい。照射脆化したタングステンを焼鈍すると欠陥が減少する。結晶粒界が欠陥消滅のシンクとなる。組織を微細にして粒界を多くすると照射脆性が改善されると考えられる。タングステンは重水素やトリチウムを吸収しないので、水素プラズマ雰囲気の環境脆化は少ない。                              

                                                  粉体粉末冶金用語辞典 より
                                                  編者:(社)粉体粉末冶金協会
                                                  発行所:  日刊工業新聞

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