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その他タングステンシートの耐熱性・耐湿性の改善

1.はじめに

 環境問題に配慮した製品開発が求められるなか、当社では鉛代替製品として樹脂とタングステンの複合材料を開発し、タングステンシートとして商品化した。図1にタングステンシートの外観を示す。本シートは高比重特性を活かした放射線遮へい用途やウェイト制振部材用途にて使用される製品であるが、特に電気電子機器業界においてはヨーロッパにおけるRoHS規制も開始され、今後鉛代替材料のニーズが高まっている状況である。
 しかしながら、電気・電子部品へのタングステンシート採用に向けては、長期信頼性を確保していく必要があり、耐熱性、耐湿性の改善が課題となっていた。今回は、タングステンシートにおける材料およびプロセス開発を取り組み耐熱性および耐湿性の改善を得ることが出来たので詳細を報告する。

2.耐熱性の改善

 従来タングステンシートには柔軟性を得るために、熱可塑性のエラストマー樹脂材料を用いていた。しかしながら、この材料ではシート成形性は優れるが、高温では塑性変形し形状を保持することが困難であった。そこで、耐熱性を改善する目的で材料プロセスの検討をおこない、現行樹脂材料に架橋プロセスを導入することで、今までの柔軟性を維持し、なおかつ耐熱性を付与することに成功した。以下に開発した耐熱性タングステンシートの各種評価データを紹介する。

2.1 引張り強度試験
 最初に、従来タングステンシート(WR1)、および開発した耐熱性タングステンシート(WR2)の常温引張り強度の測定を実施し比較をおこなった。
 表1に、引張り試験の測定条件を、また、表2に試験結果(最大応力、破断伸び)を示す。
 開発した耐熱性シートの強度は、従来とほぼ同等の性能を示すことが示された。
2.2 熱間吊り下げ保持試験
 次に、開発シートの耐熱性を評価するため簡易的に熱間吊り下げ試験評価を実施した。
 試験方法は1mmシートを20×100ダンベル形状(図2)に切り出し、加熱オーブン内にて吊り下げてその挙動を確認した。試験温度は50℃、100℃、150℃、200℃の各温度にて30min保持した。表3に試験結果を示す。
 従来シート(WR1)は100℃の保持において、自重にて変形し約10minで破断に至った。一方、耐熱シート(WR2)は200℃、30min保持後も変形は確認されなかった。
 この結果より、明らかに耐熱性能に差が認められ、開発シートにて耐熱性が付与されたものと判断される。

2.3 動的粘弾性試験
 次に、タングステンシートにおいて動的粘弾性測定評価を実施した。
 これは、試験片に対して正弦波の微小ひずみ振幅を与え、弾性率を評価する方法である。今回、各シートにて試験温度を室温から85℃まで上昇させた場合の弾性率の温度変化をプロットし比較した。測定条件を表4に、測定結果を図3に示す。
 従来シート(WR1)、耐熱シート(WR2)ともに弾性率は108Paから、なだらかに107Paへと変化している。ここで、従来シートにおいては68℃付近にて塑性変形・破断に至っているが、耐熱シートは85℃においても特性を維持していることが確認された。

2.4 促進熱老化試験
 最後に、JIS K6257「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−熱老化特性の求め方」に準拠し、耐熱性タングステンシート(WR2)の促進熱老化試験を実施した。試験方法は、ギヤー式老化試験機にて100℃、200℃加熱16時間保持後の強度・伸びを測定した。
 促進老化評価結果を表5に示す。100℃16時間保持において外観変化、強度劣化は認められなかった。200℃16時間保持においては外観変化(面荒れ)および強度・伸び低下が確認された。この結果より200℃での長期使用においては強度低下が促進するものと考えられる。要因としては樹脂の劣化が進行している可能性がある。

3.耐湿性の改善

3.1 高温高湿試験
 タングステンシートにおいて今回、架橋プロセスを導入することで耐熱性の付与がなされ熱安定性が改良されたが、その他にも高湿条件での安定性が求められる。一般的には高温高湿環境での長期保持試験において信頼性評価がなされている。表1に開発した耐熱性タングステンシート(WR2)の高温高湿環境試験(85℃85%)の結果を示す。試験方法は、タングステンシート試験片(30mm×15mm×0.35mm)を環境試験機に85℃85%の温度湿度条件にて65hr、205hr保持し試験片の特性を評価した。重量増加、比重の低下する傾向にあった。
 次に試験前および85℃85%205hr条件環境試験後の耐熱性タングステンシートおよびW粉末のX線回折測定結果を図4に示す。粉末およびシートにてW酸化反応のピークが確認されており高温高湿環境下にてW酸化が進行していることが判った。この結果よりシートの重量増加、比重の低下はW酸化反応に起因するものと考えられる。
3.2 カップリング処理による耐熱性改善
 高温高湿試験の結果、タングステンシートは高温高湿環境において特性変化が確認された。要因としてはWの酸化が要因と推測されその改善策を検討した。方法としては種々考えられるが、今回はW粉末にカップリング処理を施すことで改善効果が得られたので検討結果を報告する。
 カップリング処理とは、従来有機・無機複合材料において、有機材料と反応する官能基と無機(金属)材料と反応する官能基の2種類を併せ持つ有機材料を、無機(金属)粉体にコーティングする粉体処理方法である。樹脂と無機(金属)粉体との複合密着性を得る目的で使用される、このプロセスの効果としては、複合材料の成形性や強度の改善に寄与し、特に金属粉体が強固に被われた場合は、その耐湿性も確保されることが予測される。
 今回は、タングステンシートの耐湿性改善の方法として、シラン系のカップリング剤を使用し原料のW粉末への処理を施すことを試みた。
 図5にカップリング処理を施したタングステンシート(WR22)と耐熱性タングステンシートにおける環境試験の評価結果を示す。試験評価方法は85℃85%環境下において保持時間を500hrまでおこない、途中の特性変化の度合いを重量変化率にてグラフに示した。
 径時変化としては、直線的に重量変化しており、酸化反応が進行しているが、W粉末にカップリング処理を施した場合は、カップリングを施さなかったシートと比較してその反応速度が緩やかとなり、改善の効果が確認された。
 本データから、完全に耐湿性が確保された状態には至っていないが、改善検討の方向性としては間違ってないものと判断される。現在、更なる耐湿性を目指してカップリング処理条件の見直し検討を進めている。

4.まとめ

 今回、耐熱性タングステンシートの各種評価データを紹介し、またカップリング処理による耐湿性の改善に関する報告を行った。以下に報告内容を列記する。

1. 架橋プロセスを導入し従来と同等の強度、柔軟性を維持した耐熱性タングステンシートが得られた。
2. 耐熱性タングステンシートは100℃以上の熱環境条件下にて特性が維持されており、従来品と比較し耐熱性改善の効果が確認された。
3. 耐熱性タングステンシートにおいて、高温高湿条件下で長期間保持した場合、W酸化に起因した特性劣化が認められた。
4. W粉末にカップリング処理を施すことで耐湿性が改善されることが確認された。

 今後、耐熱性改善に関してはシート高温強度、限界温度などの詳細調査を取り組み、耐湿性改善に関してはカップリング処理条件の見直しによる更なる耐湿性改善の検討を進めていきたい。
(開発技術センター)

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