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第34号高密度タングステンシート − 鉛に替わる放射線遮へい新材料 −

1.はじめに

 放射線関連技術が進歩しその利用が拡大する中で、放射線遮へいには、その遮へい能力が優れる割に安価である鉛、もしくは鉛含有材料の遮へい材が使用されてきました。しかしながら、鉛は人体に有害な物質であり地球環境に対して影響を及ぼすものとして世界的にも規制の動きがあり、その代替材料が求められています。
 一方、環境への影響がきわめて小さなタングステンを主成分とするタングステン合金は、同体積における放射線遮へい能力が鉛と比較して非常に高く放射線遮へい材として利用されています。しかしながら、高温で焼結するため柔軟性・加工性が悪い、値段も高価であるといった課題があり、その用途は限定されてきました。
 上記の課題を克服するために、当社では長年培われてきた粉末冶金技術と複合化技術を融合することによって、タングステンと有機材料からなる全く新しい高密度の複合材料を開発し、柔軟性・リサイクル性を有する環境に優しい「タングステンシート」として商品化しました。

2.タングステンシートの製造方法

 タングステンシートの製造方法を図1に示します。高密度と柔軟性・加工性を同時に満足させるために、調整したタングステン粉末とリサイクル使用が可能なエラストマー樹脂を加温混練する事でタングステンと樹脂の複合材料が得られ、更にシート状に成形を行なうことで高密度のタングステンシートが得られます。�
 このシートは形状250mm×250mm、250mm×500mm、250mm×1000mm 、厚み1mm・2mm・3mmを標準サイズとしています。また、ご
要望に応じて最大800mm×1000mmまでのシート製作が可能であります。

3.タングステンシートの特性

 タングステンシートの比重特性、機械的特性(硬さ、引張り試験)、放射線遮へい性能を評価した
ので以下に示します。

3-1.比重特性
 放射線遮へい能力に影響を及ぼす最も大きな材料特性は比重となりますが、タングステンシートの比重は11.5以上を示し、鉛(比重=11.3)と同等以上の高比重特性が得られています。

3-2.機械的特性
 表1 にタングステンシートの硬さ、及び引張り試験による破断までの強度、伸び値を示します。
材料に柔軟性のあるエラストマー樹脂を使用する事で、硬さは軟質で鉛製品と比較し柔軟で取り扱いが容易となっています。また、放射線遮へいシート材料として十分に実用に耐える機械的特性を有しています。
表1 タングステンシートの硬さおよび引張り試験結果
測定項目硬さ(デュロメーターA)引張り強さ切断時伸び
方法JIS K6253JIS K6251JIS K6251
単位MPa
測定値95.64.425
3-3.放射線遮へい性能
 放射線遮へい材に要求される最も重要な特性は放射線遮へい性能ですが、ここではX線を対象にした低エネルギー領域放射線と、原子力発電所等で問題となるCo60γ線を対象にした高エネルギー領域放射線の2種類の放射線に対する遮へい性能を評価しました。
 まず、X線に対する遮へい性能として、表2にJIS Z 4501 「X線防護用品の鉛当量試験方法」による鉛当量試験の結果を示します。試験片は100mm×100mm×0.9mmのタングステンシートを用い、管電圧100kV及び150kVのX線について鉛当量を測定しました。タングステンシート1mm厚さあたりの鉛当量は1.1mmPb〜1.2mmPbに相当しており、鉛より高い遮へい能力を有していることが確認されました。�
 次に、高いエネルギー領域の放射線を対象にした遮へい性能試験として、Co60γ線に対する減衰率を測定評価しました。測定条件は線源にCo6(0 59.8MBq)を使用し、タングステンシート(250mm×
250mm)の厚みを変え線量を測定し放射線の減衰率を求めました。図2にタングステンシート及び、同条件にて測定したタングステン合金、鉛における放射線減衰率を示します。タングステンシートはγ線源に対して鉛と同等の遮へい性能を示すことが確認されました。
表2 タングステンシートの鉛当量試験結果
管電圧(kV)鉛当量測定値(mmPb)
(100mm×100mm×0.9mm)
1mm厚みシート換算
鉛当量(mmPb)
1001.061.18
1501.001.11

4.タングステンシートの応用例

4-1. タングステンシート
 タングステンシートの外観写真を図3に示します。タングステンシートは高い放射線遮へい性能を示すため、各種X線装置等の遮へい材として応用できます。例えば、放射線の発生源を収納している容器の内側あるいは外側に接着、ビス留め等で固定して使用することが出来、特にタングステンシートは柔軟性があり、且つハサミ等で簡単に切断・穴あけが可能であるため、配管や曲面形状に巻きつけ所定の寸法への切断・固定等が容易に行えるといった特長があります。

4-2. タングステンマット
 原子力発電所では定期検査時の仮設遮へい材として、鉛の毛を袋に織り込んだ鉛毛マットがよく使用されていますが、この代替として図4に示すようなタングステンマットが使用できます。タングステンマットはタングステンシートを表面コーティングされたガラスクロスに縫製、封入したもので、鉛毛マット以上の柔軟性を持ち、使用中の型くずれ(鉛毛が片側に集まる)もなく、取り扱いが容易です。また、タングステンマットは鉛毛マットの1/3程度の厚さで同等の遮へい能力を持つことができるため、保管、廃棄等にも便利と言えます。

4-3. 小径配管用ロール状成形品
 鉛毛マットでは遮へいし難いとされている小径配管については、タングステンシートをそのまま巻きつけても良いが、更に遮へい材の設置、撤去の時間を短縮し、作業者の被爆低減を図る目的に、図5 に示すような円筒状に成形したロール状成形品が使用できます。これは、あらかじめタングステンシートをロール状に成形し、配管への着脱をワンタッチで行うことができるようにしたもので、タングステンシートが熱可塑性で、ある程度の加温で容易にどのような形状にも成形でき、且つ、常温ではその形状を保つことができることを利用しています。

4-4. テープ状成形品
 エルボ配管や、フランジ、バルブといった複雑な形状箇所への遮へいには、図6に示す特殊成形法により製作したテープ状成形品が効果的に使用いただけます。タングステンシートやロール状成形品では適用が困難な箇所において有効な遮へい材となります。

4.まとめ

当社で開発したタングステンシートは鉛より高い放射線しゃへい性能を示しており、また柔軟性・加工性に優れるといった特徴を持ち合わせているため、医療用のレントゲン装置から各種工業分野における各種X線装置、また原子力発電所、大型電子加速設備といった放射線施設内で使用される放射線しゃへい材への応用が期待されます。
また、タングステンシートの応用製品として、作業性を良くした大面積のタングステンマット(図2)、小径配管のしゃへいに適した小径配管用ロール(図3)を開発しており、ユーザーニーズにも応えている。

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