技術情報

トップページ技術情報ニッタン技報電気接点関連 > 樹脂タングステン高比重グレード −機械加工が容易な鉛代替新材料−

電気接点関連樹脂タングステン高比重グレード −機械加工が容易な鉛代替新材料−

1. はじめに

 近年、環境問題に対する取り組みの重要性は高まっており、企業においても環境に配慮した製品開発が求められています。当社では鉛代替製品として環境への影響がきわめて小さなタングステンを主成分とするタングステン合金「ヘビーアロイ」、タングステンと有機材料からなる複合材料「樹脂タングステン」を商品化し、放射線遮へい用途やウェイト制振部材用途として様々なお客様にご使用いただいております。
 「ヘビーアロイ」(図1)は鉛よりも高い密度および放射線遮へい能力を有しており、省スペース化を実現できます。しかしながら柔軟性・加工性が悪い、高温での焼結が必要なため、電力の消費エネルギーが大きいといった課題があります。
 また「樹脂タングステン」(図2)は鉛と同等の密度および放射線遮へい能力を有しており、樹脂の特性を生かした柔軟性や容易な加工性を有しております。しかしながら切削、研削等の機械加工には適さず、三次元形状には不向きです。
 上記の課題を克服するために、当社では長年培ってきた粉末冶金技術と複合化技術とを融合することによって、機械加工が容易で高い遮へい能力を有する「樹脂タングステン」の新グレード「樹脂タングステン高比重グレード」(図3)を開発いたしました。

2. 高比重グレードの製造方法

高比重グレードの製造方法を図4に示します。高密度と快削性を同時に満足させるために調整したタングステン粉末と、リサイクル使用が可能なエラストマー樹脂を加温混練する事でタングステンと樹脂の複合材料が得られます。更にこの複合材料をプレス成形することで、高密度な高比重グレード材料となります。
 ヘビーアロイは高温での焼結が必要ですが、この高比重グレードはプレス成形のみで形状を維持できるため、高温焼結が不要です。高温焼結による電力の消費がないため省エネルギーにもなり、結果として安価に製造することが可能になります。

3. 高比重グレードの特性

高比重グレードの比重、機械的特性(硬さ、抗折力、引張り試験)、放射線遮へい性能を以下に示します。

3-1. 比重特性
 表1に高比重グレードの比重を示します。高比重グレードは鉛よりも高い比重を有しており、ウェイト制振部材用途での省スペース化が実現可能です。
表1 高比重グレードの比重特性
測定項目比重
11.3
ヘビーアロイ(HAC2)17.9
樹脂タングステンシート11.5
高比重グレード14.0


3-2. 機械的特性
 表2に高比重グレードの硬さ、抗折力及び引張り試験による破断までの強度を示します。エラストマー樹脂とタングステン材料の効果的な配合により、研削や切削などの機械加工に十分耐える機械的特性を有しています。またタングステン合金よりも加工性に優れており、プラスチック等の樹脂を削るような感覚で加工することが可能です。
表2 高比重グレードの硬さ、抗折力および引張り試験結果
測定項目硬さ抗折力
MPa
引張り強さ
MPa
デュロメーターAHRRHRB
----10.5
樹脂タングステンシート95.6---4.4
ヘビーアロイ(HAC2)--10.31300600
高比重グレード-83.1-22.19.1

3-3. 放射線遮へい性能
 放射線遮へい材に要求される最も重要な特性は遮へい性能ですが、ここではX線を対象にした低エネルギー領域放射線と、原子力発電所等で問題となるCo60γ線を対象にした高エネルギー領域放射線の2種類の放射線に対する遮へい性能を評価しました。

X線遮蔽能力
 X線に対する遮へい性能として、表3にJIS Z 4501 「X線防護用品の鉛当量試験方法」による鉛当量試験
の結果を示します。試験片は100mm×100mm×1.0mm の高比重グレードを用い、管電圧100kV及び150kVのX線について鉛当量を測定しました。高比重グレード1mm厚さあたりの鉛当量1.17mmPb〜1.33mmPbに相当しており、鉛以上の遮へい能力を有していることが確認されました。

γ線遮蔽能力
 高いエネルギー領域の放射線を対象にした遮へい性能試験として、Co60γ線に対する減衰率を測定評価しました。測定条件は線源にCo60を使用し、高比重グレードの厚みを変え線量を測定して放射線の減衰率を求めました。図5に高比重グレード及び、同条件にて測定した樹脂タングステンシート、タングステン合金(ヘビーアロイ)、鉛における放射線減衰率を示します。
 高比重グレードはX線およびγ線源に対して鉛以上の遮へい性能を示しており、放射線遮へい用途においても省スペース化が期待できます。
表3 厚さ1mmの高比重グレードの鉛当量試験結果
管電圧(kV)樹脂タングステンシート高比重グレード
1001.24 mmPb1.33 mmPb
1501.09 mmPb1.17 mmPb


3-4. 耐熱特性
 高比重グレードは樹脂とタングステンの複合材料で構成されており、熱特性は樹脂の特性に依存します。高比重グレードにおいては、リサイクル性を考慮し熱可塑性のエラストマー樹脂材料を使用しており、60℃以上の高温雰囲気では軟化、変形します。特に温度の高い状態でご使用いただく際はお問い合わせの上、事前に評価確認のほどお願い致します。


3-5. 耐酸化性
 タングステンは酸化しやすい金属であり、室温でも表面に僅かな酸化被膜をつくります。当社は表面酸化を防ぐ耐水コーティング技術も有しており、高比重グレードに耐水コーティングを施すことも可能です。湿度の高い状態でのご使用いただく際にはお問い合わせの上、事前に評価確認のほどお願い致します。

4. 高比重グレードの加工性

 タングステンは切削加工が困難であり、加工は一般的にダイヤモンドホイル等による研削加工や放電加工に限られます。高比重グレードはこの難加工材であるタングステンを主成分としながら、プラスチックなどの樹脂のように容易に加工する事ができます。図6のようなフライス加工やエンドミル加工、タッピング等により、用途に応じた様々な形状への加工はもちろん、図7のようにワイヤーソー等で薄くスライスすることも可能です。
(※樹脂が油成分に弱いため、研削油をご使用の場合は事前にお問い合わせください。)

5. まとめ

 当社にて開発した高比重グレードは、鉛以上の比重と高い放射線遮へい性能を有しており、鉛代替ウェイト材、遮へい材として省スペース化が可能です。また優れた加工性・リサイクル性を兼ね備えておりますので、タングステン合金に比べ安価に製造することができます。
 今後医療用のレントゲン装置から各種工業分野におけるX線装置、また原子力発電所、大型電子加速設備といった放射線施設内で使用される「環境に優しい放射線遮へい材」として、また放射線遮へい材以外にも鉛代替ウェイト部材等への応用が期待されます。

(電材部品部 製造技術グループ 末吉 知力也)

ニッタン技報 

日本タングステンへのお問い合わせはこちら

お電話・FAXのお客様はお近くの支店へお問い合わせください。
  • 東京支店 TEL 03-5812-2481 FAX 03-5812-2484
  • 名古屋支店 TEL 052-203-1081 FAX 052-203-1082
  • 大阪支店 TEL 06-6372-5681 FAX 06-6371-3986
  • 九州支店 TEL 0942-50-0050 FAX 0942-50-0055
日本タングステン株式会社(Nippon Tungsten Co.,Ltd)
〒812-8538 福岡市博多区美野島一丁目2番8号
TEL 092-415-5500(代表) / FAX 092-415-5511(代表)
Copyright(C) 2006 Nippon Tungsten Co., Ltd. All right reserved.
お問い合わせフォーム お電話・FAXでのお問い合わせ