技術情報

電気接点関連NDB法によるWとCuの直接接合

1.はじめに

NDB法は銅タングステン合金と銅との接合方法として、当社が開発した接合技術で、ろう材を使用しない直接接合方法です。NDBはNon Defective Bonding の略称です。
 このたび、NDB法の応用として、銅タングステン合金の代わりに純タングステンと銅との直接接合方法を開発しました。この方法で製造した製品を総称して「NDB−TR(TRはTungsten Rodの略称)」と呼びます。
以下、従来のろう付け法と比較しながらNBD−TRの特徴を紹介します。

2.製造方法

NDB−TRは下に示されるような工程で製造されます。

3.接合メカニズム

3-1NDB−TRの接合過程
NDB−TRの理論的な接合メカニズムは充分には解明されていませんが、下記のような過程を経て接合されるものと考えられます。
 
(1)Cuとwが機械的に接している段階[NDB処理セット時]
この段階ではCuはミクロ的には、微細な凸凹を持つW表面の凸部の一部と接している。
(2)Cuの溶解によりWとの接触面積が増加する段階[NDB処理初期段階]
Wの微細な凸凹表面にCuが入り込んできて、Cuとwの原子間距離がオングストローム単位となって、原子間相互の引力が増大していく。(図1参照)
(3)CuとWとの原子間距離がさらに近くなる段階[NDB処理中期段階]
原子間相互の引力によりさらに原子間距離が縮まり、原子間引力が平衡な位置に来て、エネルギー的に最も安定な状態となる。そして、自由電子が共通化され、擬似的な金属結合が形成される。(図1参照)
(4)Cuが凝固する段階[NDB処理終期段階]
Cuが冷却されて凝固し、台金が形成される。
3-2NDB焼きばめ、または圧入との比較

NDBは原子レベルでの引力で接合が行われているのに対し、焼きばめた圧入はお互いの摩擦と圧力による機械的な接合が行われています。したがって、TRを銅台金にはめ込む場合、TRは銅より熱膨張が小さいために、加熱されると銅がTRよりも膨張して圧力の低下、もしくは解離で外れたりします。しかし、NDBの場合は擬似的な金属結合による接合ですので、熱膨張差が直接の原因として外れることはありません。
3-3NDBとろう付けの比較

ミクロ的にはNDBもろう付けも接合メカニズムは同じですが、ろう付けの場合は高価な銀ろうを使い、また雰囲気(炉中)ろう付け以外はすべてフラックスを必要とし、作業に熟練を要します。一方、NDBはTRと銅を直接一体化させたもので、ろう付けが不要となり、より信頼性が向上します。また、NDBは接合部に銅より電気伝導度の低い中間層(ろう層)を介在していませんので、ろう付けよりも電気抵抗が小さく、熱伝導性に優れています。 表1には従来のろう付けとNDBの特色の比較を、写真1にはろう付け品の接合部断面組織を、写真2にNDB品の接合部断面組織を示します。
表1従来のろう付とNDB比較
 ろう付NDB
接合面積60〜80%ほぼ100%
ろう付強度
(剪断強度)
98N/mm2以上
(10kgf/mm2
127N/mm2以上
(13kgf/mm2)
接合部フラックスが残留することがある。 

4.接合特性

4-1 接合強度(図2参照)
NDBはろう付けよりも高い接合強度を示しています。その破壊状態はろう付けが接合部(ろう層)から破断しているのに対し、NDBは台金そのものが破壊しており、台金強度より高い接合強度を有しているのがわかります。 また、NDBはろう付けも熱衝撃による接合部の強度低下は見られません。むしろ、熱衝撃により銅台金がやや硬化したためか双方とも高くなる傾向があります。
No.1 NDB-TR
No.2 NDB-TR 500℃→水冷熱衝撃品
No.3 TRとCuのAgろう付け品
No.4 TRとCuのAgろう付け品 500℃→水冷熱衝撃品
図2 NDB-TRと、TRとCuのAgろう付け品の接合強度の関係
4-2熱伝導率(表2参照)

熱伝導率はNDBが高い値を示しています。これはNDBが接合部に銅より電気伝導度の低い中間層(ろう層)を介在していないことと、接合率がほぼ100%に近いためと考えられます。

表2

各接合品の熱伝導率
No測定温度
(℃)
熱拡散
(cu/sec)
比熱
(J/g・℃)
熱電導率
(J/cm・sec・℃)
No.128.40.58581 0.20450 1.6772
2 27.80.60193 0.219901.85442
3 27.9 0.75914 0.199302.11815
4 27.60.678890.209302.00919
No.1 WとCuをAgろう付け
No.2 WとCuをAgろう付け
No.3 NDB-TR
No.4 NDB-TR
4-3接合部電気抵抗(表3、図3参照)

接合部電気抵抗も熱伝導率の場合と同じ理由でNDBの方が低くて、しかもばらつきの小さい値を示しています。

表3

各接合品の電気抵抗
 No測定値(μΩ)平均値 全平均
ろう付品153.26 49.64 53.3552.08 
258.64 58.41 57.80 58.29 
331.06 31.44 31.2531.25 
434.20 34.64 34.5534.46 
569.87 70.53 70.53 70.3149.28
NDB品130.03 29.60 27.7329.12 
230.26 30.26 33.7731.43 
342.49 42.22 45.9443.55 
429.54 28.07 27.78 23.46 
526.92 26.38 26.3826.56 31.82

5.まとめ

以上、NDB−TRの特徴を述べましたが、まとめると次のようになります。
(1)ろう材及びフラックスを使わない直接接合ですので、不具合のない健全な接合が行えます。
(2)接合面積率はほぼ100%に近いものが得られます。
(3)接合強度は127N/mm2(13kgf/mm2)以上が得られます。
(4)熱伝導率はろう付けよりも高い値を示します。
(5)接合部の電気抵抗はろう付けよりも低い値を示します。

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